蜜月離宮 ―朝―リュートが目を覚ましたのは、空が白み始めたころだった。部屋の中の本棚や家具が新しい日光に照らされ、白くぼんやりと輪郭を浮かび上がらせていた。リュートは肌触りの良いシーツに鼻先を擦らせる。ぐりぐりと顔を左右に押し込むと、また微睡みの中に溶けてしまいそうだった。
ふと背中を覆う温かさと、心地好い窮屈さに首を後ろに擡げた。凛々しい眉毛と、瞼を縁取る細かい睫毛。寝顔すらも整っているんだな、と、リュートはしばらく、隣で眠るコキュウに見とれていた。後ろから抱きとめるように腕を回され、その重みに甘えていたかったが、リュートは慎重に、もぞもぞとベッドを這い出した。脱皮する蛇も、このような心持ちなのだろうか。古い皮からすり抜けて、新しい素肌にガウンを羽織る。絹の裾がひらひらと太ももを擽った。
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