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    Tobik_S

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    Tobik_S

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    エゴが女の子に変身してシチに会っちゃうシチカルの話。

    続けるかは未定

    未定誰かに興味を持ったのが初めてだった。静かなその雰囲気は周りと違って俺に安心感さえ与えた。気がつけば隣にいたし、それは長いものへとなっていた。一緒に時を過ごすようになって俺の中の奴への好きの形が変わった頃にはもう素直になるには遅すぎた年齢になっていた。もう今更この心地のいい関係を壊すなんて俺には出来なかった。なりたかった教師になり、自分の役目に集中したいとそれは無意識にシチロウとの距離を取ってしまっていた。長い髪を丁寧に梳かして、鏡に映る自分にため息が出る。
    もし、自分が女だったら、女の姿でシチロウと出会っていればこの関係はもっと違っていたのかと何度ももしもの事を考える。実に無駄な時間だ。

    「俺が女だったら…か」

    指を軽くたてた後、魔力が体を包む。想像する自分のもしもの姿を。身長は少し低くなっては、体つきは細くなっては柔らかい作りになっていく。長い髪はそのまま、自分が女になったその姿を鏡に映った。

    「…流石に俺の雰囲気を出しすぎたか。これはシチロウにバレるか」

    ではこれはどうだともう一度自分に魔術をかける。今度は優しい目つきに、癖っ毛なんか消して、ただのふわふわな可愛らしい紺色の長い髪、胸は一般的に、身長はさっきより低くそう想像しながら変身すれば、それは俺と真反対な大人しそうなその雰囲気に俺は満足した。

    「これならシチロウにピッタりじゃないか?」

    別に誰かに頼まれた訳でもないのに、それはただの俺の意味のない遊びだ。もしもの事を考えてただある訳ないそのシチロウとの関係を妄想する。

    「……この姿なら俺ってバレないよな」

    ゴクリと唾液を飲み込み、考えてはならない思考が過ぎる。もし、俺じゃなくこの偽りの女の姿で今から出会えば、使命も家系も何もない俺じゃない俺でアイツと出会えば、そんな事を一瞬でも考えてしまえばそれはどんどんと沼に落ちるような気持ちになっていった。

    「…馬鹿言え、アイツの家系能力ですぐバレる。どう偽って…」

    何度もしもの考えてしまうのか俺は情けない。
    俺が女だったら、シチロウと腐れ縁を始めて流れるように付き合って、いい年齢になっていい加減どうにかしなきゃなんて苦笑いして、籍を入れて、子供を授かって、お互い厳しく教えてしまって泣かせて、困りながら子育てをして、子供が自立してからゆっくり二人の時間を過ごすなんて一般的な幸せを過ごしていたかもしれない。
    けれどそんな当たり前の幸せは俺がシチロウと同じ性別というだけで叶う事のない夢だ。別にこの世界は同性愛に何も問題ない。結婚だってできる。悪魔は愛に飢えているから。

    「…そう理由を付けたいだけだ」

    そう、俺がシチロウに愛していると言えないのも、腐れ縁から抜け出せないのも全部性別のせいだと逃げているだけだ。関係を壊す事が怖いだけの臆病者だ。
    シチロウには可愛らしくて知識が豊富な女性が似合っている。そう自分に何度も言い聞かせた。

    「あぁ俺が本当にこの姿だったらな」

    乾いた笑いが漏れ出る。魔術を解いてはベットに潜り込んだ。


    _________________

    「…で俺は何でまたこの姿でいるんだ?」

    休日、俺はまたあの女の姿になっては街に出ていた。ご丁寧に黒のワンピースを着てだ。昨日の可笑しな思考は今日まで影響して、踏み込んではいけない領域に来てしまった。一体俺は本当に何を考えているんだ。せめてシチロウが見ているならまだしも、ただ無駄なこの時間はなんだ。グルリと周りを見渡せば、カップルが多く街を歩いている。女一人で歩いているには少々浮くその空間に俺は更に頭を悩ました。

    「(この姿に未練あり過ぎるだろッ)」

    あぁやめだやめだ、さっさと魔術を解いて帰りにサボテンショップでも覗いて行こう。そう人ごみから背を向けた瞬間、大きな手が俺の肩を掴んだ。

    「!」
    「あ、あのハンカチ落としましたよ?」
    「しッ…!?」

    ーーーシチロウ!?
    ズンっと大きな影が俺に被った。不思議そうに奴は首を傾げる。何でこんなところに来てるんだよっと逆ギレしそうになるのを必死に堪えた。お約束にもほどがあるだろ馬鹿がッ!
    深呼吸をして、震える手でシチロウの手からハンカチを受け取る。落ち着け俺、今ここで変身していることがバレたらシチロウにあらぬ誤解をされてしまう。ゴクリと唾液を飲み込んで、高くなった声で小さく声をかけた。

    「あ、ありがとうございます」
    「いえいえ。顔色優れなさそうですが大丈夫ですか?」
    「だ、大丈夫です」
    「………どうやら大丈夫ではなさそうなので、あそこのベンチまで一緒に行ってもいいですか?」

    じっとシチロウが見つめてくると優しげに笑って見せた。
    ーーコイツ虚偽鈴(ブザー)使ったなッ

    今すぐ逃げ出したくても、このしつこい視線が許してくれない。俺はとりあえず小さく頷いてシチロウに心配されながらベンチへと向かった。

    「僕、何か飲み物買ってくるんでここで休んでいてください」
    「は、はい」

    ではとまた優しくシチロウは微笑むと近くのショップへと向かった。その背中を俺は歯軋りをして睨みつけた。

    「(シチロウの奴、見ず知らずの奴に優しくしすぎじゃないか?ハンカチを拾うなんてベタなナンパしやがってッニコニコ笑いやがってッ!!)」

    えらくまぁ慣れた動きだなッギリギリと歯軋りが止まらない。シチロウの背中を睨みつけているとその背中がこちらを振り返り慌てて顔を元に戻した。

    「レモネード、苦手じゃなかったですか?」
    「…えぇ大丈夫です。ありがとうございます」
    「よかった。本当はお水とかがよかったんですけど近くに売ってるのなくて。貧血とか起こしていないといいんですけど」
    「ありがとうございます」
    「………」

    カップを受け取るとじっとシチロウは失礼すぎるほど見つめてくるものだから何ですかと睨みつけてしまうと、慌てて手を顔の前で動かしては誤ってくる。

    「あ、いや、すみません。僕そのこんな見た目だから…大きいし怯えられること多いんですけど、あなた全然怯えてないから不思議で…」
    「はぁ…まぁそんな怖くないですし」
    「え!?そ、そうですか」
    「えぇ、こうやって心配もしてくれるのでお優しい方だと思います」
    「え、えぇ嬉しいな」

    どれだけ一緒にいてると思ってるんだとかそんなの今のコイツには伝わるはずもない訳で、
    ただ素直にそう言えばシチロウはえらく嬉しそうに頬を染めた。

    「(…へぇ、そんな顔するんだな)」

    小さな口でストローを咥えては、シチロウにバレないように下を向いた。

    女になった、たったそれだけで。

    「…レモネードありがとうございます。何かお礼をさせて下さい」
    「い、いいですいいですッ!勝手にしたことですので」
    「いえそうもいきませんので」
    「あー……そ、それじゃあ一ついいですか?」
    「はい」
    「…プレゼントを渡したいヒトがいて、いいお店知らないかなぁなんて」
    「プレゼントですか」

    シチロウにプレゼントを渡す相手がいたなんて初めて知った俺は驚きを隠せなかった。
    スカートの裾を掴んで、俺は微笑み返した。

    「いいですよ。そのお方は何か好きな物はありますか?」
    「あるにはあるんですけど、それだとこだわりが強そうなので他のものにしたいんですが思い付かなくて」
    「でしたらいい雑貨屋がありますよ。そこなら何か見つかるかもしれません」

    魔術で紙を出してはスラスラと地図を書いてはシチロウに渡した。

    「わ!ありがとうございますっ」
    「いいプレゼントあるといいですね」
    「ふふ、はい!」
    「…レモネードご馳走様でした。体も楽になりましたし、私はそろそろお暇させて頂きます」
    「あ、はい!」
    「ご親切にありがとうございました」

    ニコっと笑いかければ、シチロウは優しく手を振り返してくれた。その姿が心底嫌で、早足で俺はその場から逃げた。

    ________________

    「カルエゴくーーん!!」
    「うるさい」

    職員室で書類を片付けていれば、昼休みと同時に長い髪を揺らして、えらく笑顔でシチロウが駆け寄ってきた。周りの目など気にせず近寄ってくる。

    「一緒にご飯食べよッ」
    「いや別にいいが、わざわざ言いに来なくていいだろメールしろ」
    「だってだってー最近捕まらないんだもんキミ」
    「忙しいんだ」
    「だったら呼びに来た方が効率いいでしょ?」
    「はぁ…わかったすぐ行く」

    トントンと書類を整えては、急かすシチロウの背中を押しながら職員室を後にした。




    食事を持って生物学問準備室に入ってはシチロウは嬉しそうに魔茶を準備して、マスクを外して笑っては席に着いた。

    「ねぇ聞いてカルエゴくん」
    「ん?」
    「昨日ねぇ変わった女性に会ったんだ」
    「…へぇ」
    「僕の事怖がらないんだよ」
    「……それで?」
    「あんな女性初めてだよ。やっぱり皆初めは怖がっちゃうもん」
    「ふーん」
    「うっわ興味無さそう」
    「正直興味ないな」
    「えー」
    「何だ気に入ったのか?」
    「うーんどうだろ?確かに綺麗で可愛いヒトだったとは思うけど少ししか話さなかったしよく分からないや」
    「何だそんな事だけで昼食誘ってきたのか?」
    「だってビックリしたんだもん。ふふ、また会って話したいかも」
    「ついにシチロウに色恋の話か」
    「…バカにしてる?」
    「してる」
    「こら」
    「ククッ」

    小さな口でパンを噛みちぎった。心臓がドキドキとうるさい。冷や汗だって出ているかもしれないその体の感覚。パンの味なんて感じず、ただの柔らかいそれを噛んだだけだった。

    「顔は好みなのか?」
    「…正直好みかも」
    「へぇ」
    「興味ないとか言ってめっちゃ聞くじゃん」
    「暇だからな」
    「酷い」

    たった女になっただけで
    可愛い服を着ただけで
    シチロウとの関係が変わる。

    体がドクドクと全身が脈打つ。
    そんな些細なことでシチロウは俺なんかよりたった一瞬会っただけの女に優しい顔を向ける。
    苦しくて、後悔して、胸が張り裂けそうになった。顔に熱がこもっていく。下を向いて歯を強く噛み締めた。

    「(気付かれてない…俺だってバレてない…)」

    ------あぁ…最高だッッ

    俺にもチャンスが巡ってきたッ。
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