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    natume_sss

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    natume_sss

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    来月下旬発行予定新刊サンプル。
    なんちゃってアイドルパロ。
    公式認定音痴なサン武の二人ですが武道くんは歌ウマアイドルとなっております。
    書いてる本人は芸能人とかよくわかっていないので広い心の目でお読み頂きますようお願い申し上げます。
    ご都合主義万歳でやらかしております。
    自分の性癖に忠実で人様の地雷に一切考慮しておりませんので、地雷持ちの方はご遠慮下さい。
    何が出ても大丈夫な方向けです。

    Unexpected Relationships(仮)『僕と君の考え方はいつも交わる事がなくて』
    『お互いに譲れなくて平行線を辿っていく』
     でもいつかはそれを笑い合える日がくるよね、なんて続くけどどう見ても笑い合える感じが全くない。
     全然噛み合ってない歌声。統一感なんて全くないバラバラのダンス。
     途中までの歌詞に合ってると言えば合ってると主張出来なくもないけどこれはない。ヒドい、ヒドすぎる。
    「……………なァ相棒、マジでコレで通ったのか…?」
    「…通ったから、発売前に渡されたサンプルPVの鑑賞会を、他でもねぇ相棒のお前に付き合ってもらってんだよ千冬。やっぱコレはないよなァ…」
    「ないな。酷すぎンだろ」
     苦虫を噛み締めてプロとしてあるまじき、デュオだからこそ丸分かりなチグハグな歌とダンスを流す映像に頭を抱えるオレを横に座る千冬が可哀想なものを見る目で見ているのが分かるが怒る気力も湧かない。そうなると分かった上で千冬を誘ったのはオレだし、そもそもこんな酷い有り様をメンバーであるイヌピーくんやココくんに見せる訳にもいかない。曲がりなりにもオレは彼等のボスなんだから。
     そう意気込んだ所でどうせ何れイヌピーくんもココくんもコレを見るだろうし何かしら苦言を呈されるのは目に見えてるけど、嫌な事を先送りして後からまとめてツケが来るタイプに定評のあるオレは今回も逃げの一手を選んだ訳だ。しかし誘った相手はチームは違えども相棒。容赦のない感想を向けられて胸を抉られた。自覚あるからぐうの音も出ねぇけど。
     ただでさえオレはダンスが下手くそだって言うのに、更にヒドいコレが世に出るのかと思うと泣きたくなるが残念ながらコレでまだマシな方なのだ。それは幾度も幾度も時間を許す限り歌い踊り続けたオレともう一人…三途くんと付き合ってくれたカメラさんやスタッフさん達が一番良ぉく知ってる。マジでオレと三途くん噛み合わねーってしみじみ感じた。
     ダンスは勿論歌声もちぐはぐで揃ってない。ダンスは下手だけど歌はそれなりに評価されているオレは東卍でダンスメンバーとして活躍している三途くんがおん……歌があまり得意じゃないんだと歌撮りで初めて知った。道理で直前まで歌うのを嫌がっていた訳だ。
     因みに目の前で流れてるPVの歌声はその中でも沢山収録した中で一番マシなやつである。オレのダンスと一緒の妥協点だ。テイクを何回重ねても噛み合わなさすぎて時間が押しまくった結果、こんな不甲斐ないモノが世に出されるって事になった。出た後の評価がマジで怖ぇ〜…。
     そもそも何でオレと三途くんがデュオを組んで新曲発表を迎えたのかというと、オレが在籍する黒龍と三途くんが在籍する東京卍會、そしてもう一チーム、天竺というアイドルグループを抱える事務所、リベンジャーズ事務所による主要グループのシャッフル企画によるものだ。
     東京卍會、黒龍、天竺。三チームのメンバーからファンクラブ会員によるアンケートで特に希望の多かった組み合わせを発表。そしてその選ばれた中から各チームが一週毎にズラしてリリースしたCDを購入すれば投票出来るというシステムで選ばれたグループ、ないしはデュオでCDを出すという、ファンにとっては夢のような企画であり誰と組まされるか分からない上に組み合わせによっては最悪な結果にしかならないオレ達当事者にとっては地獄のような企画である。
     オレは勿論地獄。どうせなら気心の知れてる千冬とか憧れてるマイキーくんやドラケンくんとか天竺のメンバーだけど黒龍の先輩でもあるイザナくんや獅音くん、または先代で今は裏方に引っ込みつつある大寿くんと組みたかった。なのにオレと組むと選ばれたのは三途くん。
     発表されたあの時の声は未だに鮮明に思い出せる。
    『リベンジャーズ事務所所属アイドルのシャッフル企画、次はデュオの発表です!選ばれた組み合わせは東京卍會、伍番隊三途春千夜!相方は黒龍11代目リーダー、花垣武道ィ!!』
    『『………はあ?!』』
     でっけードームで生中継アリの発表イベントなんてしてくれたんだがオレの名前が呼ばれた時は組む相手が信じられなくて叫んだし、物静かなイメージのある三途くんも盛大に叫んでた。
    『投票理由は意外な組み合わせでエントリーされているから見てみたい、噛み合わなさそうな二人がどんなパフォーマンスをするのか気になる…と言った内容が大多数を占めてますね。二人もビックリした顔してますね〜。意気込みをどうぞ!』
    『…………………、』
    『ガ、ガンバリマスノデオウエンヨロシクオネガイシマス』
     司会者を務めてくれてる大物芸能人が笑いながら理由を挙げてマイキーくんとイザナくん、河田兄弟と灰谷兄弟、イヌピーくんとドラケンくん等といった仲の悪い兄弟、兄弟ユニット、仲が良い事で知られる面々と接点のある面子で決まっていく中、接点なんてほぼ皆無なオレ達が選ばれるなんて想像もしてなかったオレはちらりと三途くんへ顔を向ければ彼は般若の様な顔でオレを睨み付けていた。
     この時点でオレは無理だな!と悟った。
     意外性があるからと好奇心で票が集まったオレと三途くん。どうなるのかと期待の歓声が湧く中、当人であるオレはマジでコイツと…?とありありと顔に書いた表情を浮かべていただろう。司会者に意気込みを振られても口を開かない三途くんにオレは慌てて無難な言葉を紡いだがびっくりするくらい片言である。
     他の皆みたいに好感のある言葉や挑発的な言葉を紡ぐでもなく超超超微妙なコメント(しかも一人はだんまり)なオレ達に司会者は意外な組み合わせの二人が織り成すパフォーマンスが楽しみですね!と続けて次の発表を始めた。流石大物芸能人だ。
     マジでどうするんだ、仲良く出来るのか?と発表で湧く中オレは再度三途くんの方を見た。般若が居た。オレはすぐに目を逸らした。見ていても何にもならない。決まってしまったモンは覆らない事は先程大暴れを披露したマイキーくんとイザナくんの姿で思い知ってる。
    (本気で折り合い合わなさそ〜…向き合うのも難しそ〜)
     何て思ったがそれはオレだけじゃなく彼もだろう。逸らしていた顔を再度向ければあちらは般若顔でまだオレを見ていた。お互いにお互いを般若顔と絶望面で見詰めたまま、これからの展開に嫌な予感しかしなかった。
     そんな始まりから早数ヶ月。
     案の定オレらの関係は最悪だった。意見とか考え方とか全然違いすぎて衝突が絶えなかったのだ。
     元々歌が得意で歌中心のオレとアイドル活動よりもモデル活動が圧倒的に割合が多いけどダンスも得意な三途くん。お互いにお互いの得意分野を活かしあったパフォーマンスを出来れば良かったんだろうにとこの酷いPVを見れば思うけど噛み合せる気なんてお互いに湧かなかったから仕方ない。
     このとんでもねぇ出来を鑑賞するのに巻き込んだ千冬はこれ酷評しか出ねーだろ、と告げた後にオレとだったらこんな事にならなかったのにな、と続けた。確かにそうだとオレは頷いたしリリースを楽しみにしてくれてるであろう皆の反応を聞かされるの怖ぇなぁと呟くしかなかった。
     あっという間にリリース日を迎えたオレと三途くんのデュオ曲は想像通りコラボグループの中で一番酷いとダントツで酷評の嵐だった。そりゃそうだ。こんなひでぇモン世に生み出してんだから。他のグループは仲悪い面子も居たし折り合いの悪そうなグループも居たのに己の持ち味をしっかりと活かして上手に絡めあって昇華してってんだから尚のことオレらのデュオは最悪の一言でしかない。
     パフォーマンス重視の三途くんと歌唱重視のオレの、お互いに自分の得意分野に関して譲れず活かし合う事もフォローし合う事もしなかったんだから、とオレは自分自身のプロ意識の低さに嘆息した。
     ココくんとイヌピーくんは三途くんに怒るし大寿くんなんて先輩として流石にこの意識の低さは見逃せねぇと滾々と説教されたくらいだ。正座してるオレの真ん前にあのデケェ体格で圧をぶつけられながら叱られてみろ。生きた心地なんてしなかったし二度とあんな恐ろしい目に合いたくない。因みにこの1回きりだろうなァ?と圧も掛けられた。めっちゃ怖かった。
    「…まァ、こんなに酷かったんだし二度目はないだろ」
     関係者各所にすみませんすみませんと頭を下げ続け、三途くんを撲殺してやると息巻くイヌピーくんと証拠隠滅なら任せろ存分に殺れと背中を押すココくんを止める日々に疲労していたオレのぼやきは悲しいかな。フラグでしかなかった。



    「………正気かよ真兄」
    「正気じゃなきゃお前ら揃って呼び出さねーだろ」
    「いや本当に正気なんすか真一郎くん。真一郎くんも酷すぎるって言ってたじゃないっすか」
    「まぁオレとしてもお前らに二度目はねぇなと思ってたよ。だがお前らのファンの声も凄かったんだがまん……関係者にも自分で自分の評価下げてるお前らに挽回のチャンス与えてやってくれって懇願されたんだよな〜。お前らは自分が思う以上に色んな人間から認められてんだよ。だからお膳立てしてやった。
     流石に今度こそあんな無様な姿を晒すような真似を春千夜も武道もしねーよァ?」
     ここまでしてやってんのに繰り返したら分かってるよな、とにこにこ笑顔の真一郎くん…基、社長に呼び出されたオレと三途くんはもう二度とやる事はないと思ってたデュオの二度目の新曲の打診を受けて絶句した。横に座ってる三途くんの顔を見ればすげー嫌そうだ。多分オレも同じ顔してる自信がある。
     だって一度目で思い知ったけど三途くんオレの事めちゃくちゃ嫌いじゃん。嫌われてる相手に寄り添う気持ちなんて湧かねーし多分彼もおんなじだろ?恥の上塗りしかしない自信がある。そんな自信持ってどうするんだと自分でも思うが仕方ない。
     …けれどそれ以上に自分自身でやらかして評価を下げた汚名を雪ぐ、降って湧いたチャンスに拳を握る自分が居た。
     あれから黒龍としてイヌピーくんとココくんが不甲斐ないオレの事を支えてくれた上に見捨てないでいてくれた事務所やオレをオファーしてくれる相手が居るからこそ仕事はなくならなかったけど、それでもアレでオレは本当に黒龍のボスとして相応しいのかという声が大きくなってる事も知ってる。
     今目の前に居る伝説と謳われる真一郎くんの凄さも勿論、イザナくんや大寿くん達歴代のリーダーが築き連ねてきたアイドルグループ、黒龍の名を冠する重みをオレは本当に解ってなかったんだ。
    「…分かりました。雪辱を果たすチャンスの場を与えてくれてありがとうございます、真一郎くん」
    「お、承諾してくれるか武道!」
     オレの事を嫌ってる三途くんに寄り添う気持ちは正直なところまだ湧かない。だけどオレの所為で下げた黒龍の評判を、オレの実力はこんなモンじゃないと憤ってくれたメンバー達の為にもオレは自分で蒔いた種を回収するチャンスを逃す手はないと思った。
    「おいドブ、テメェ何勝手な事吐かしてやがる…ッ!」
     何を勝手に、と静かに恫喝する三途くんに怯む事なくオレは彼を真っ直ぐに見据える。
    「言っとくけど、オレも君も与えられたこのチャンスを棒に振るなんて出来ないんだよ。オレが不甲斐ないものを世に出した所為で評価が落ちてる黒龍は勿論、君の所為で東京卍會の評価も落ちてるんだから」
    「はぁ…?!」
    「これは社長直々に与えられた温情でオレ達にとって名誉挽回のチャンスなんだ。オレだってはっきり言って君ともう一度やるなんて嫌だよ。でもオレの私情でイヌピーくんやココくんの評価を下げるなんて許され難い状況だ。
     三途くん、君は?君の所為で東京卍會はプロ意識の低いお遊び集団だって思われて良いの?良い訳ないよな?」
     リベンジャーズ事務所の中でもペーペーのオレが先輩である三途くんに生意気な口を聞くなんて普通は許されないだろう。だが嫌でも彼と向き合わないとオレも前に進めないし、何よりもオレをこの世界に引き込んでくれたマイキーくんにも申し訳が立たない。
     ほんの少し前までの嫌だ嫌だと感じていた気持ちを遥かに凌ぐプロ意識の低い黒龍11代目花垣武道というレッテルを浮上する機会を掴みたいオレは睨むように三途くんを見詰めた。
     ここまで言っても尚やりたくないと駄々を捏ねるならこの人はこの程度の人だったって事だ。そんな軽蔑の眼差しを含んだオレの顔を見た三途くんは苦虫を噛み潰したような顔をして、
    「…言い訳ねぇだろ」
     そう、絞り出すように口に出した。
    「なら話は決まりだ。これはお前ら用に作ってもらった歌な。今回は揃って確認しろ。ダンスの振り付けに関しては全部ベンケイに一任してる。歌指導はワカだ」
     破格の待遇に感謝しろよ〜、と朗らかに笑う真一郎くんにイラッとしつつも告げられた内容に身を引き締めて挑まなければならないと拳をぎゅっと握り締める。
     一人で勝手に決めて大寿くんに怒られるかな。イヌピーくんとココくんも怒り出さないと良いけど、と身近な人達の事を思い浮かべながら三途くんの方を見た。
     相変わらず苦虫を噛み潰したような顔をしているが、最初の頃の完全に拒絶してる雰囲気は和らいでる…と、思う。彼なりに歩み寄ろうと感じているのかもしれない。
     オレも嫌な事を避け続けていないで今回こそは彼と向き合わなければ。少しくらい三途くんの方も譲歩してくれねーと無理だけど。
    「ありがとうございます、真一郎くん。」
     真一郎くんから渡されたデモを手に社長室を退室し、事務所内にある練習室へと足を向ける。一足先に歩いている三途くんに駆け寄って隣に立った。
    「今回もよろしくね、三途くん」
    「お前となんざよろしくしてられるか成り上がり風情が。オレ達がやってんのは遊びじゃねーんだよ」
    「なりあがり…」
    「成り上がりだろ。持て囃されて調子乗ってんじゃねーよ。お遊戯会やりたきゃ他所でやれ、オレを巻き込むな」
     凄い言われようだな、と絶句してしまったがこの言葉は頂けない。
     確かにオレは傍から見れば段階を踏まずに伝統あるアイドル黒龍に加入した上に更にそのトップに立った男だ。同業の人間からしたら面白くもないだろうし嫉妬の感情をぶつけられた事も多々ある。それ自体はオレも仕方ないとは思ってる。でも、
    「オレは遊びでアイドルやってねーっすよ三途くん。オレは本気でアイドルやってんだ。遊びでやった事なんかただの一度もない!」
     片手間のお遊びでアイドルやってるだなんて不快な思い違いには到底我慢する事が出来ず、キレたオレは三途くんの腕をがっしりと掴んだ。
    「ッオイ、軽々しくオレに触ンな!」
    「知るか!アンタがオレの事嫌いだろうが変な勘違いされてんのは我慢ならねぇ!!オレのダンス技術は拙かろうが真剣にやってんだよ!!アンタちゃんとオレ達黒龍の事は勿論、そもそもオレ達が酷評を受ける事になった曲の事もちゃんと見てねーだろ?!どっちがお遊びでアイドルやってるかその眼で見極めてみろ!!」
     オレの手を振り払おうとする三途くんの腕に抱き着いて嫌がられようが知るかと目的地である練習室へと急ぐ。間もなく到着した練習室の扉を苛立ちの衝動のまま乱暴に開いて三途くんごと中に押し入った。
    「おいテメェ、いい加減に…ッ」
    「離してやるっすよ。逃げないでちゃんと見て下さいね」
    「誰が逃げるか、舐めた事言ってんじゃねーぞヘドロ!」
    「はいはいドブでもヘドロ何とでもどーぞ。しょうもない罵りしか出ないんすかアンタ。まずはオレ達のクソみてぇな一曲目のPVから見るっすよ」
    「クソはテメェ一人だろ」
    「ちゃーんとその目かっぽじって良く見りゃ分かるっすよ」
     オレが気に食わねーのは分かったけどこの人マジでちゃんと見てないんだなと失望にも似た感情を抱きつつ、大切なデモを壁に沿って設置されている長テーブルの上に置いて三途くんを見れば不貞腐れた顔で立ち尽くしてるけど逃げる様子はない。
     捕まえなくても大丈夫だな、と判断して次はプロジェクターを起動して鏡の前にスクリーンを下ろすべくボタンを押してから歴代のCD、DVD、ブルーレイの置かれたデカい棚を漁ってオレ達のCDを取り出してその中に封入されてるPVディスクをプロジェクターに入れて稼働させる。
     流れ出す音楽と映像を見ながら千冬を巻き込んでボロカスに言われた鑑賞会を思い出す。改めて見なくても酷過ぎるの一言に尽きるクソみてぇなPVだ。オレは相手に沿わずに自分の感じるままだけに歌ってるし、三途くんも同様に自分の感性だけで踊ってる。てんでバラバラで統一感もない。黒龍、ないしは東卍を離れればこの程度の児戯にも等しいプロ意識の欠片もない物を世に生み出し無駄金を払わされたと後ろ指を刺されても反論の余地すら許され難い代物だ。
     独り善がりなパフォーマンスを繰り広げるオレ達にもう一度チャンスを、の声を上げてくれた人達、そしてその声を破格の待遇で実現してくれた社長と幹部達の恩に報いる為にも持ち味を活かしあったパフォーマンスを発揮出来たらな、と思う。その為にはオレが三途くんに寄り添う気持ちを芽生えさせる事は勿論、三途くんにも同様に協力してもらわなければならない訳だが…。
    (難しそ〜…)
     すごい顔でオレ達の歌とダンスを見ている三途くんの様子に前回の事はお互い水に流してお手手取り合って仲良く頑張りましょ〜!なんて雰囲気にはならねーな、と感じてしまう。実際オレも無理だし。
    「……ンだコレ」
    「オレらのファーストシングルっすね」
    「マジかよ…」
     音楽が止まると同時に三途くんがすっげー低い声で唸るように呟いた。今までちゃんと見てなかった事が窺い知れると同時に自分もちゃんと酷い所業をやらかしたのをオレだけのせいにせず自分の非も認めてくれたようで何よりだ。
    「だから言ったでしょ、東卍の評価下げてるって。オレもアンタも独り善がりなパフォーマンスしてるだけのお遊戯会よりヒデェやつっす。酷過ぎるモンを見てもらった所で今度はオレの認識を少しは改めて欲しいんで続けてオレ達黒龍のPV見てもらいますね。…アンタ、東卍以外見てねーだろ」
     東卍だけがこの事務所の看板背負ってるアイドルじゃないんすよ、と続けてオレは問答無用でオレ達の最新曲、初回限定盤に付属しているPVをセットして再生する。
    「おいそんなモン付けンな」
    「ちゃんとオレら黒龍を見てからそのセリフ言ってみろよ。オレは真剣にやってんだから」
     黒龍11代目はメインボーカルがオレ。メインダンサーがイヌピーくん。ココくんはどちらもそつなくこなしてオレ達の至らない点を支えてくれる形で成り立っている。
     主旋律を歌うオレに寄り添うココくんの歌声とイヌピーくんの低音が深みを感じさせ、ダイナミックに踊るイヌピーくんとダンステクニックに長けたココくんが拙いオレのダンスを見れるように支えてくれている。主にココくんに頼ってるけれど、それでもオレもイヌピーくんもお互いにお互いを尊重して高め合い素晴らしいパフォーマンスへと昇華させる。それがオレ達黒龍11代目だ。
     人数の多い東京卍會に比べると規模が小さく見えるかもしれないけど人数が少なくてもオレ達黒龍は東京卍會に負けてないパフォーマンスが出来ていると自負してる。オレを見付けてくれたマイキーくんのお陰でデビュー出来たけど、これだけは譲れない。オレ達黒龍はこんなにも凄いんだって自信持って言える。
     最新曲はロックナンバーだからバラードが得意なオレは四苦八苦したけど二人のお陰でカッコよく歌えたし激しいダンスだって必死に覚えたから形にはなってる、と思う。
     この前に撮った三途くんとのデュオとは雲泥の差、というか比べるのも馬鹿らしいレベルだ。
    「……、」
     付けンな、とオレを睥睨した三途くんは始めは詰まらなさそうにマイキーが一番だろ、とボヤいていたがオレが歌い始めた瞬間、見る目が変わった。嫌々見始めたのが嘘のように真剣な眼差しでオレ達のパフォーマンスを見ている彼にオレは話し掛ける。
    「オレがお遊戯会やってる訳じゃないって分かってくれたっすか?」
    「……そう、みてぇだな」
     悔しそうに唸り声を漏らしながら認める言葉を零した三途くんにオレはドヤ顔を向けて分かったなら良いんすよ、なんてつい調子に乗った言葉を返したオレの頭は三途くんにすぱんと叩かれてしまった。



    ※ここから距離を一気に縮めていきます。
    本文はあくまでサンプルですので推敲の際に変更する可能性が大いにございます。
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    natume_sss

    PROGRESS来月下旬発行予定新刊サンプル。
    なんちゃってアイドルパロ。
    公式認定音痴なサン武の二人ですが武道くんは歌ウマアイドルとなっております。
    書いてる本人は芸能人とかよくわかっていないので広い心の目でお読み頂きますようお願い申し上げます。
    ご都合主義万歳でやらかしております。
    自分の性癖に忠実で人様の地雷に一切考慮しておりませんので、地雷持ちの方はご遠慮下さい。
    何が出ても大丈夫な方向けです。
    Unexpected Relationships(仮)『僕と君の考え方はいつも交わる事がなくて』
    『お互いに譲れなくて平行線を辿っていく』
     でもいつかはそれを笑い合える日がくるよね、なんて続くけどどう見ても笑い合える感じが全くない。
     全然噛み合ってない歌声。統一感なんて全くないバラバラのダンス。
     途中までの歌詞に合ってると言えば合ってると主張出来なくもないけどこれはない。ヒドい、ヒドすぎる。
    「……………なァ相棒、マジでコレで通ったのか…?」
    「…通ったから、発売前に渡されたサンプルPVの鑑賞会を、他でもねぇ相棒のお前に付き合ってもらってんだよ千冬。やっぱコレはないよなァ…」
    「ないな。酷すぎンだろ」
     苦虫を噛み締めてプロとしてあるまじき、デュオだからこそ丸分かりなチグハグな歌とダンスを流す映像に頭を抱えるオレを横に座る千冬が可哀想なものを見る目で見ているのが分かるが怒る気力も湧かない。そうなると分かった上で千冬を誘ったのはオレだし、そもそもこんな酷い有り様をメンバーであるイヌピーくんやココくんに見せる訳にもいかない。曲がりなりにもオレは彼等のボスなんだから。
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