君を教えて 毎年毎年、寒くて憂鬱なだけだった冬が、最近好きになってきた。
一月に入って、三度目の買い出しから帰ってきて、家の主の為に貯蔵庫に日持ちのする食べ物を仕舞っていく。
「浮奇、帰ってきてたのか」
「ただいま、ふぅふぅちゃん」
のそりと自分の部屋から顔を出した家の主とは、何年か前に勤めていたカフェで会った人だった。コーヒーショップなのに、種類の少ないハーブティばかり頼むから、ちょっとだけ気になっていた。彼が読んでいる本が面白そうで、つい横目に見ていたら、目が合ってしまって、そこから時々話すようになった。
や、半分嘘かも。
顔と身体が格好良かったからちらちら見てたっていうのも、ちょっと――結構、ある。
「燻製も、木の実も、大体いるものは揃ったと思うよ」
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