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    途綺*

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    途綺*

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    🔮🐑//フールズメイト

    初手からチェックメイトで背水の陣を強いられる話。※全てフィクションです

    #PsyBorg

    それは夢のような時間だった。

    まだ合格したことすら上手く飲み込めていないのに、気づけば同時にデビューするというメンバーとの初顔合わせの日を迎えていた。緊張と不安を抱えて通話へ参加すれば、同じく緊張の伺える声が聞こえて、ファルガーは小さく息を吐いた。

    自己紹介後にマネージャーからの軽い説明を受けて、それぞれの好みについて当たり障りのない雑談を交わして、数時間の会話を終える。グループのメンバーと会話できたことで、ようやくデビューに対しての実感が湧いてきたのを感じていた。

    「...少し寝るか。」

    無事に終えられたことへの安心感からか身体が睡眠を求めていて、ファルガーは大人しくベッドへ向かうことにした。背中を伸ばしてストレッチをしてから立ちあがろうとした瞬間に、通話のコールが鳴る。

    相手は「Uki」。先程まで通話をしていた同じグループのメンバーだった。何か言い忘れたことでもあったのかと応答ボタンを押す。

    「もしもし?」
    「あっ、出てくれた。ごめんね、急に掛けちゃって。」
    「問題ないよ。どうかしたか?」

    よく晴れた日のそよ風のような特徴的な声をした彼は、確か歌が得意と言っていた気がする。いつまでも聴いていたくなるような心地良い声に、なんとなく緊張もほぐれたのが印象的だった。当の本人はとてつもなく緊張していたようだけれど。

    「ちょっと聞きたいことがあって、今って時間ある?」
    「あぁ、大丈夫だ。」

    捨てられた猫のような不安の滲む声に思わず応えたくなってしまって、ファルガーは二つ返事で了承していた。

    「聞き違いだったら悪いんだけど、さっき腐男子って言った?」
    「え?...あ、あぁ。」
    「それって現実でもいけるタイプ?俺はゲイなんだけど、男に興味はある?」
    「待て待て、なんの話だ、」

    恐らく歳下だろうメンバーの相談なら喜んで乗ってあげようと意気込んで握った拳が空を切る。先程のしおらしさは何処へやら、矢継ぎ早に質問を重ねてくる浮奇に頭が混乱した。

    「ファルガーはどっち側?男との経験はある?君の声を聴いて抱かれてみたいなって思っちゃって。」
    「なっ、落ち着け!」
    「さっき長距離移動は難しいって話をしてたよね。俺が会いに行くから住所教えてくれない?」
    「浮奇、ストップ!」
    「へへ、名前呼んでくれて嬉しい。」

    ーーー前言撤回、こいつは猫なんかじゃない。優しい顔をして引き摺り込む蛇だ。

    このままでは彼のペースに飲まれて会話が成り立たなくなる気配がして、ファルガーは彼が再び口を開く前に言葉を返す。

    「俺はバイだ。お前の声は心地良いし可愛いやつだなとは思ったが、それ以上の言及は控える。あと、絶対住所は教えない。というか、浮奇。俺たち数時間前に知り合ったばかりなんだから、まずはちゃんと段階を踏んでくれ!」

    一息で言い切れば黙り込まれて、もしかして何か傷つけるようなことを言ってしまったかと内心で焦る。やがて彼はふぅん、と小さく溢した。

    「分かった、段階を踏めばいいんだね。じっくり落とすから覚悟しといて。」

    思わず言葉を失ったファルガーをよそに、一方的に通話が切断される。

    「...何も分かってないだろうが!」

    ようやく絞り出した言葉は、嵐のように去っていた彼に届くことはなかった。これから長く一緒に活動をしていくのに、随分と性急に事を運ばれた気がする。あまりに前途多難なスタートに、ファルガーは頭を抱えた。明日のミーティングを考えると今から胃が痛い。

    「じっくり...か。」

    ーーーまだ知り合って数時間だし、お互いをよく知らないし。

    無遠慮に踏み込んでこられたのに嫌悪感がない上にハッキリと断る言い方をしなかったことについては、今はまだ、見て見ぬ振りをすることにした。
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    途綺*

    DONE🔮🐑//貴方を護る星空の祈り

    少し疲れて夢見が悪くなった🐑の話。「君の知らない真夜中の攻防(https://poipiku.com/6922981/8317869.html)」の対になるイメージで書きましたが、未読でも単体で読めます。
    人間にはそれぞれ活動するのに適した時間帯があるのだと、ファルガーが教えてくれたのはいつのことだっただろう。朝が得意な人もいれば、夜の方が頭が働きやすい人もいる。だからそんなに気にすることはないと、頭を撫でてくれたのを覚えている。あぁそうだ、あれは二人で暮らし始めて一ヶ月が経った頃だった。お互いに二人で暮らすことには慣れてきたのに、全くもって彼と同じ生活リズムを送れないことを悩んでいた。今になって考えれば些細なことだと笑えるけれど、当時は酷く思い悩んで色んな人に相談して、見兼ねたファルガーが声を掛けて「心地よくいられること」をお互いに最優先に生活しようと決めたのだった。




    そんなやり取りから数ヶ月。いつも通り深夜に寝室へ向かった浮奇は、すっかり寝入っている愛おしいひとの隣へ潜り込もうとベッドへ近づいた。静かにマットレスへ膝を付いて起こしていないことを確認しようと向けた視線の先で、眉を顰めて時折呼吸を詰めるファルガーを捉える。
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