月と星十五夜の季節、せめて雰囲気だけでも味わおうとカルデア内シミュレーションルームにてマスターこと藤丸立香とそのサーヴァント蘆屋道満は2人で簡易的な月見を楽しんでいた。
『今の世にも月見を嗜む風習があるのですね』
平安の世、陰陽師は星見をして占いなどをしていたらしいけど月を見る文化は一部の貴族ぐらいのものだったらしい
「私も本格的に詳しいってワケじゃないけどね」
そんな他愛もない話をしながらエミヤの用意してくれた団子をつまんで口にする。
リツカが団子に舌鼓をうっていると道満がボソリと呟いた。
『月が綺麗ですね』
「ヘァッ⁉」
思わず団子を吹き出しそうになる
(何を…)
(言ってるんだ、この道満は…)
果たして道満はその元のエピソードを知っているのだろうか?
平安男の雅とかそういうのなのか?
いや、この男の事である、人の反応を見てほくそ笑んでいるのかもしれない─。
半ば膨れっ面で道満をにらむ
『?』
道満は素知らぬ顔である。
『かつて自分の権力に満ちた世を望月(満月)の如く欠けたることもなし、と詠んだ御仁もおられましたが…時節こそ違えども藤原香子殿の物語の歌でもお借りしましょう』
『深き夜のあはれを知るも 入る月のおぼろけならぬちぎりとぞ思ふ』
「?」
今度はリツカがわからないといった表情をする。
『月を愛でるのも結構ですが秋冷御身に障ります、ここはひとつ…』
そうして直綴の袖をかけられそのまま肩を抱き寄せられる
頬を染めむしろ身体が火照ってきてしまいそうだが
(シミュレーターだからそんなに寒くは無いのでは?)とは思いながらもそれを口にはせず身を寄せるリツカであった。
~了~