末摘花カルデア内で至近距離で向かい合う蘆屋道満と藤丸立香
不意に道満が立香に手を伸ばす。道満が立香に触れたかと思うと唐突に胸元へ抱きつぶすかの如く引き寄せた。
「んっ!むぐぐぐぐ!」
驚きと痛みと苦しさが混雑する。程なくして道満が立香を解放する。
「ぷっはぁ!鼻がつぶれちゃう~!」
大きく息を吐き手で鼻を押さえる立香。鼻先が少し紅くなっている。
『いやはや、何処に鼻があるかわかりませんで』
道満が嘲笑う。
「んむぅ~」
立香が紅くなった鼻をさすりながら不機嫌そうに道満を睨みあげる。
『しかしこう見るとその紅色の髪と紅鼻(あかはな)まるで末摘花ですなぁ』
「すえつむはな…?」
立香が首を傾げる
続けて道満が語る
『はい、紫式部殿の書物“源氏物語”に容姿の鼻が紅い事と花が紅い事をかけまして紅花の雅称、末摘花と呼ばれるおなごがおりまして…』
ふむふむ、と立香が身を入れて聞く。
『…なんでも醜女だったとか』
道満が薄笑いを浮かべる。
「しこめ…?」
またも立香が首を傾げ道満に訊ねる
『当世で言うところの“不美人”(ブス)と言うやつですな』
「ぶ…っ!」
立香が絶句する。
「もうっ!いつもそうやって人の事からかうんだから~!」
頬をふくらませてプイッとそっぽを向く立香。
『ンフフフフ♪他意はないのでどうかお許しを…』
そうやって立香に手を伸ばす道満
先程の事もありびくり、と身を構える立香
その緊張を解すかのように指の背で立香の頬に軽く触れ、大きく広い手で紅花色の髪を優しく撫でる
立香の表情が和らぎ頬が桜色に染まり
はにかむように微笑む。
その様子を猫のように目を細め見つめる道満。
立香の頬を両手で優しく包み込むようにして顔を近づける。鼻先と鼻先を触れ合わせた後、口付けを交わす2人であった。
~終~