潔黒今となっては笑い話だが、ドイツ棟で黒名と共に過ごしている間、俺は自分が黒名に好かれていると信じて疑わなかった。別に、はじめはそうではなかった。単に仲のいい友人、信頼できる仲間、俺にとって黒名はそういう存在だったから彼も、そう思ってくれていると無意識の内に信じていた。その気持ちが変わり始めたきっかけは明確にはない。
ただ、目を合わせれば柔らかく微笑んで手を振ってくれ、試合後の興奮で寝付けなくて部屋を抜け出せば同じように抜け出し眠気が来るまで話し相手になってくれた。ゴールを決めた嬉しさのまま黒名を見ればまるで自分のことのように喜んでくれる。笑いのツボが似ている。実は食べ物の好き嫌いがあって苦手なものをこっそり押し付けてくる。そんな、小さな小さな出来事が少しずつ積み重なって、気づけば俺は黒名に恋をしていた。
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