Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    nnoni

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    nnoni

    ☆quiet follow

    潔が告白を断られるとこから始まって最終的に付き合う潔黒。完成まで絶対時間がかかるので書き終えた部分まで。

    潔黒今となっては笑い話だが、ドイツ棟で黒名と共に過ごしている間、俺は自分が黒名に好かれていると信じて疑わなかった。別に、はじめはそうではなかった。単に仲のいい友人、信頼できる仲間、俺にとって黒名はそういう存在だったから彼も、そう思ってくれていると無意識の内に信じていた。その気持ちが変わり始めたきっかけは明確にはない。
    ただ、目を合わせれば柔らかく微笑んで手を振ってくれ、試合後の興奮で寝付けなくて部屋を抜け出せば同じように抜け出し眠気が来るまで話し相手になってくれた。ゴールを決めた嬉しさのまま黒名を見ればまるで自分のことのように喜んでくれる。笑いのツボが似ている。実は食べ物の好き嫌いがあって苦手なものをこっそり押し付けてくる。そんな、小さな小さな出来事が少しずつ積み重なって、気づけば俺は黒名に恋をしていた。
    気持ちを伝えるべきかどうかは酷く悩んだ。吊り橋効果。俺と黒名の関係性はそれとよく似ていた。ドイツ棟で真っ先に俺の味方になって俺が活躍するための道を作ってくれた存在。そんな存在を好意的に見るなという方が難しい話だ。
    仮に、この気持ちが偽りの感情から生まれたとしても、俺が黒名を見る度に胸が熱くなるのも、真っ先に俺を見て欲しいと思う気持ちに変わりはない。そっか、俺、黒名の一番になりたいんだ。小難しいことを抜きにして自分の欲に従えば、悩んでいたのが嘘のようにあっさりと結論が出た。
    告白することに不安がないと言えば嘘になる。けれど心のどこかで黒名なら受け入れてくれるかもしれないと思っていた。俺が黒名の方を見ていない時に限って向けられる視線。もしかしたら、と心の片隅で淡い期待を抱いてきたのだけれど。

    「……すまない。俺は潔とは付き合えない」

    残念ながら、現実はそう甘くなかった。
     
    二人で話がしたいのだと黒名の手を引いて部屋から連れ出し、ほんまに仲がええなぁと呆れたように笑う氷織と雪宮に見送られたのはつい先ほどのこと。向かう先は二人きりで話したい時に使う監視カメラの死角の位置。
    いつもならする道中のお喋りもしない俺にどうしたんだ?と不思議がる黒名にまだ内緒とはぐらかして、緊張をほぐすためにかじゃれついてきた黒名に結局普段の調子に戻ってしまって、笑い合っていたのに。

    「俺は確かに潔のことは好きだが、恋愛対象として見れない。本当にすまない」

    誠意を示すためにか腰を折って謝罪する黒名は明確に俺の好意を拒絶していた。口説き落とすことも許されない。黒名が俺に望む役割は仲のいい友人だと。
    ならば、あの視線は何だったんだ。振り返らずともわかる、じりじりと熱い視線を向けておいて、どうして俺の告白を受け入れてくれない。荒ぶる感情のままそう問いただせばよかったのに、好いた男相手にそんなみっともない真似は出来なかった。

    「そっ、か。俺の方こそごめんな。急にこんな事言って、驚かせたよな。顔合わせるのも気まずかったら部屋も、変えてもらえるように頼んでおくから」

    「なあ、一回だけ抱きしめさせてくれないか」

    初めて抱きしめた身体は俺よりも小さくて腕の中にすっぽりと収まり、俺は黒名を抱きしめるために生まれたんじゃないかと錯覚するほど丁度良かった。いつまでも抱きしめていたくなるほど放しがたくて、自分からお願いしたくせに馬鹿な真似をしたと後悔する羽目になった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍💕❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    cat_step0416

    DONEisrn
    にょたゆりで夏の海と花火と話です。
    サブタイトルは「心中って自殺死体と他殺死体の組み合わせだけどこの二人ってどっちがどっちだろ!」です。
    夏の儚さの隙間に、いつだってあなたを想うよ ふくらはぎの中ほどまで水につけた女は、つめて、と小さく呟いた。夏の海と言えど、水という液体は総じて冷たいものである。
     砂浜に脱がれたスニーカーの中に丸まったハイソックスがいかにも、という感じがする。ローファーの中で几帳面に畳まれた自分の靴下と並んでいたのが、遠い過去のようだった。
     潔は、伸びた髪を潮風で揺らしながら小さく鼻歌をこぼしていた。随分と調子外れで、原曲に辿り着いた時にはサビまで来ていた。数年前に流行した曲だった。
     この女は、とんと現世に興味が無い。サッカーという競技、そしてそれに付随するものにしか興味が無いのである。それを羨ましいと思うのは、自分がサッカーをしている側の人間で、彼女の目に映り込める人間だからこそ思える贅沢なことである。そういうものらしい。最近のことわかんないから曖昧に笑って流しちゃうんだよな、なんて困ったように頬をかいていた女は、今楽しそうにパシャリと水を跳ねさせてはしゃいでいる。その姿を知るのは俺だけ。そういうことに優越感を抱いた自分がいる。それを認めたくなくて、小さく漏れた溜息に、潔はどしたん、なんて気が抜ける声を出しながらこちらを向いた。
    3927