かわいいひとね「若、ご飯と薬をお持ちしました」
頭の上に氷嚢を乗っけた若が弱々しくこちらを向いた。
「……薬飲みたくないなあ」
「しまった。出先から連れ戻してでもお嬢に持ってきてもらうんだった」
「絶対にやめなさい……」
ケホ、と渇いた咳をひとつ。瞼に腫れぼったい気怠さを纏わせたまま布団からゆっくりと起き上がるので背中を支えると、まだ風邪菌と激しく闘いの火花を起こしているようだ。若の身体はまだ熱い。
「寝れましたか?」
「わからない。頭がずっとぐるぐるしていて」
「熱も特段下がってはいないようですね」
「頭が重たくてガンガンして喉がガサガサして目が回る」
───昨晩フラフラの状態で若はご帰宅され、厨にいたオレの顔を見るないなや「あとはたのむよ」と言って意識を失うように倒れたのだ。
2818