ifififif 仄かに桃色に色付く唇。毛先を軽く巻いてもらった長い髪。
折角、咲希と穂波が仕立ててくれたのに、全力疾走しているからもう出来上がった当時のままではいかない。待ち合わせ時間が刻一刻と向かっているから急がなければという焦りと、髪やリップが風と汗で崩れてしまっている辛さに帰りたい気持ちに押し潰されそうだったが、寒い中彼を待たせてしまっている罪悪感が勝り、どうしても辿り着かなければいかない。
人生初の恋人が出来て初めてのクリスマスなのだから、絶対に後悔したくなかった。
『この日、放課後、時間貰っていい?』
スマートフォンのスケジュールアプリを開き、顔を真っ赤にしながら『二十三日』を指差す恋人——カイトは、とても愛おしく思えた。
私にとって、生まれて初めての、クリスマスデートのお誘いだった。
カイトは、二十四日、二十五日は私がLeo/needやミク達とクリスマスパーティーを分かったうえで二十三日を選んでくれたのだ。
『クリスマスデートだね』
そう伝えると、カイトは余計に恥ずかしそうに赤面した。
学校から全速力で走り、シブヤ駅前に到着すると、見慣れた青い髪を見つけたが、目に飛び込んできた光景に、走る速度を一層速める。
二人組の女性と、困惑した表情で苦笑を浮かべるカイト。あれは間違いなく
「すみません! この人と待ち合わせしてたのは私です!」
走る速度のまま突進するようにカイトに抱き着く。女性達に見せ付けるようにそのままの体勢で二人を凝視すれば、罰の悪そうな表情をされ、去っていった。
良かった、と安堵したと同時に、今まで走っていた疲れが来て、暫くカイトにしがみ付く。そうしていると、ふわり、彼の長い腕が背中に回って来た。
「一歌、ありがとう、美容師の人にカットモデルをやってほしい、って言われたんだけど、ぐいぐい来られて断れなくて……」
「私も遅れちゃってごめんね」
「そんなの気にしてない」
と、ハグしながら会話をしていたら、こそこそと、あそこの高校生カップル可愛いね、と会話が聞こえてきて、急いでカイトから離れた。
カイトは照れつつ、私を見る。
「今日の一歌は、何だかふわふわしてて、可愛いね」
「そ、そうかな」
「うん」
髪を巻いているからなのか、私が浮かれているからなのか、どちらに対してふわふわという言葉を使っているのかは定かではないが、カイトが嬉しそうなので、深くは考えなかった。
「先にカイトの行きつけのアイス屋さんで、クリスマス限定のパフェを食べに行こうか」
「その前に、お花屋さんに寄ってもいい?」
「いいけど、なんで?」
「……何でだろうね」
当日のデートプランをお互い練りながら、指と指を絡め合わせて手を繋ぎ、クリスマスソングの流れる人が行き交う街へと繰り出した。