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    gre_maimai

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    gre_maimai

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    ワンコレオカイくんとアニマルポリス(猫カフェ)一歌ちゃんの派生SSです。間に合うように書いたので誤字脱字確認していません。お目汚し失礼します。

    手の指先にキス:賞賛や感謝 寒い、痛い、怖い。
     雨粒が体を激しく打ち付けてくる。黒くて自身より一回り体の大きな何かに、後ろの左足を思い切り噛まれ、その激痛によって上手く歩けない。それ以前に腹も空いて、力が出ないから動けない。
     きっとこのまま力尽きるのだろう。この世は、自分で狩をして生きていかねばならない。生きる為には弱いものを狩る。それがこの世界のルールだ。
     このまま過ごしていれば、このまま餓死するか、俺を探しに彷徨っているあの得体の知れない黒いあいつが見つけて丸呑みされるかの、どちらかだ。
     この世界で生きる希望など、もう、ない。死んで来世に期待しよう。
     ゆっくりと、瞼を落とそうとした時だった。
     不意に、体を誰かに触られた。
     それに思わず驚愕し、瞼をぱっちり開け、飛び起きた。
     暗くて良く見えないが、俺よりも体が大きい。あの黒い何かだ。
     もう死んでも良いかと思っていたが、反射的に攻撃的になり、敵の体から伸びた細い何かを目視で狙いを定め、それに向かって口を大きく開け、タイミング良く噛み砕いた。
     小さくて短い悲鳴と共に、血の匂いが漂う。嗅いだ事のない動物の血。恐ろしくて一層力を込めて噛み付く。
     しかし、噛み付いた動物は振り解いたり、反撃する事なく、じっ、と耐えていた。体に添えられた温かい『何か』は優しく摩ってくる。
    「大丈夫だよ、怖かったね」
     敵は何かを言っている。何を言っているかは理解出来ない。それでも俺とは敵対しようという姿勢は一切なさそうだ。口をそっと咥えていたものから離す。すると、体全体を包み込むように動物は抱く。温もりが温かい。雨と泥と、血の臭いに、仄かに嗅いだ事のない甘い香りが混ざっている。天気の良い野原で嗅いだ事のある、花の良い香りと似ている。
     まるで天国のようだ。
     体全体の力が抜け、少しずつ、深い夢の中へと、身を任せた。

     目を覚ますと、見た事のない空間にいた。無機質な白い天井。優しく照らすオレンジのライト。体には柔らかい布が被さっていた。それに、外よりも遥かに此処は気温が高い。不思議な場所だ。
    「あっ、おはよう」
     ふと、声を掛けられた。何処かで聞いた声。
     あの雨の中で聞いた声だ。
     耳を立て、ゆっくりと体を起こそうとしたが、後ろの左足がずきり、と痛み、途端に倒れた。よく見ると、左足には白い布を巻かれていた。
     顔だけ、声がする方へと向ける。
     そこには水色の服を着た『人間』がいた。多分、女の子。しかし、服は全て水と泥で汚れている。長い黒髪もびしょぬれだし。左手の薬指は俺の左足と同じように、白い布が巻かれていた。
     あの時の花のような甘い香りが鼻につく。
     此処に連れて来たのは、あの人間だろう。
     人間は俺の方へと歩み寄り右手で背中を優しく触れる。布が巻かれた方の手は、俺の顔の近くに添えていた。気持ちが良い。人間の表情は、穏やかに微笑んでいた。それだけで、未知の空間に連れてこられたざわつく不穏感は、一気に溶けていった。
     優しい人だ。
     手に巻かれた布の箇所は、俺が反射的に噛んだ所だ。あの時の血の匂いが此処から強く感じた。
     ごめんなさい、噛んで。
     側に置かれた手指に巻かれた布へと顔と近付けて、その箇所をそっと舐めた。味が何故か苦いし舌との感触も合わない。それでも懺悔するように舐める。
    「ふふ、心配してくれてるの? ありがとう」
     何を言っているのかは理解出来ないが、澄んだ優しい声と、口角を上げて嬉しそうに微笑む。
     天国みたいだ。
     彼女に一気に釘付けになり、暫くじっ、と、見つめていた。
     この子の、側にいたい。そう、思った。

     此処はアニマルタウンに建てられた動物病院だと、先に入院していた犬に教えてもらった。医者に毎日のように足の調子を診てもらったお陰で、日に日に痛みは消え、普段通りに歩けるようになった。因みにアニマルタウンは動物と人間が仲良く暮らしていて、動物も家を与えられ、人間と同じように暮らしているらしい。医者は野犬の俺を心配し、暫く病院に置いてくれるそうだが、迷惑は掛けたくないから足が完治したら、家を探そうと思う。
    一先ず、人間の言葉を理解しなければいけない。日常的にまず必要だと感じたし、なにより
    「わんちゃん、今日も元気そうだね」
     俺を助けてくれたあの子の言葉を知りたいからだ。
     あの女の子は『イチカ』という名前だと、先程にも出てきた犬に教えてもらった。アニマルタウンの平和を守る、アニマルポリスだという。街の為なら自身の犠牲も厭わないらしい。
     制服を纏ったイチカは、病院を訪れ、俺の顔を見るなり頭を撫でてくれた。嬉しい。無意識に尻尾を激しく揺らす。誰かに会えてこんなに感情が昂るのは、生まれて初めてだった。微かに花の匂いもした。花畑の近くに暮らしているか、それとも家に毎日花を飾っているのだろうか。どちらにせよ、イチカに花の香りはとてもお似合いだ。
     彼女の左手の薬指を確認する。グローブから覗く傷は痛々しく残っている。傷が消えますように、と、願いを込めて、舐める。
     他の人間に呼ばれ、イチカは撫でていた手を離し、其方へと行ってしまった。頭部に残る温かい感覚が名残惜しく居座っている。
     まだ、イチカと遊べていない。もっと、一緒に居たい。
     クウン、と鳴いてみせたが、イチカは気付かない。大きな声で吠えれば気付いてくれそうだが、周りには既にワンワン鳴いている犬や、辛そうに鳴いている他の動物の声が溢れていて、俺の遠吠えなど彼女の耳に入る筈がない。
     人間の言葉が話せれば。人間だったら。
     否、俺は人間ではないし、人間にもなれない。
     もう一度、クウン、と鳴いてから、部屋の隅へと、身を引いて、遠くからイチカの様子を眺めるしかやる事がなかった。

     その日の夜。
     電気は付いていないのに、部屋は明るい。窓から顔を覗く満天の星々が眩しいのだ。その星が線を描きながら地上へと落ちていった。落ちた時に音はしない。あれはどうなっているのか。
     好奇心が勝り、施錠されていなかった窓から外へと飛び出した。此処は気に入っているから、匂いを辿ればまた此処へ帰れる。
     落ちていく星を追い掛けながら走る。怪我をしてから全力で走るのは久し振りだ。楽しい。
     イチカとこうやって走りたいな。それは無理だ。人間と犬の脚力の差があって、同じ速度では走れない。
     俺が人間になれれば——そうすれば、話も通じるし、名前も呼べる。一緒に走ったり、遊べる。
     人間になりたいな。なれるわけ、ないのにな。
     その瞬間。
     星が、俺に向かって落ちてきたのだ。星って、見かけに寄らず、実際は途轍もなく大きな岩らしい。凄い、と感心していると、もう星は目の前だった。
     死ぬ前に、もう一度イチカに会いたかったな。
     星と衝突する寸前に、走馬灯のように思い出されるイチカの笑顔を思い出しながら、眩い光に視界が眩んだ。

    「待てええええ!」
     普段の制服とは違い、長いスカートが走行の邪魔をして上手く走れない。それに靴はローファーだ。バランスが取りづらい。
     侵入捜査だからとミノリから衣装を渡されて着てみれば、オレンジ色で施された秋らしいワンピースだった。可愛らしいけれど、犯人が逃走した場合の事が考えられていない服装だ。着用前に断ろうと試みたが、ミノリが嬉しそうな顔をして『ハルカちゃんとこのワンピース、絶対イチカちゃんに似合うねって話しながら選んだの!』と言われたから、受け取る他なかったのだ。
     罰が悪い事に、逃走者は猿だ。普段の制服ならきっと追い付いている。それでも確保しなければ、被害は拡大するだろう。
     ローファーと足の相性が合わないのか、先程から足がズキズキと痛い。走りたくない。
     それでも、何としてでも、犯人を捕まえなければ——!
     しかし、想いと体は空回りし、動かしていた両足は絡れ、盛大に地べたへ前から転倒した。
     逃してしまった。面目ない感情で暫く顔が上げられない。やっと犯人と侵入捜査により、近距離で接近出来たのに、折角のチャンスを無駄にした私は、警官失格だ。
     すると、耳から街中の住民達が一斉に響めき出した。
     徐に顔を上げると、先を走っていて逃したとばかりに思っていた猿が、第三者に取り押さえられていた。
     取り押さえているのは誰だろう。応援かな。しかし、今日の任務は私一人の役目だ。それに
     頭に尖った犬耳、腰にはふさふさな尻尾が生えている『男の人』なんて、署の中には存在しない。
     兎に角、考えるよりも先にあの犯人の元へ急ぐ。
     辿り着くと、犯人はギャイギャイ鳴いているし、押さえられた両腕をどうにかして引っこ抜こうと暴れていたが、男の人の腕力が強いのか、抜け出すのは困難のようだった。
     ワンピースのポケットから手錠を取り出して、犯人の両手首にそれを掛ける。一先ず逮捕だ。
    「あ、あの、ありがとうございます」
     犯人を捕らえてくれた男性に声を掛ける。パーマ掛かった髪から覗く横顔は綺麗に整っている。こんな人が普段からこの街にいたら、女性は放っておかなそうだが。違う街から引っ越して来たのだろうか。
     すると、彼はこちらへ顔を向けると、目を細めてこう言った。
    「イチカ、俺、偉い?」
     目を輝かせて、彼は言う。腰から生えた尻尾はぶんぶんと激しく揺れていた。
     それに、私の名前を、何故会った事もない男性が知っているのか。不思議でたまらない。
    「えと、偉かったら、頭、撫でてほしい……」
     顔を赤らめながら、彼は言う。体は私よりも大きいのとその表情との大きな差異がある彼に無意識に母性が反応し、言われた通りにふわふわの髪の上から右手で撫でれば、嬉しそうに相手はクウン、と鼻から声を出した。彼が犬なのか人間なのか分からない。
     すると、彼は私の左手を見つけるや否や、猿の両手を掴んでいた片方の手を離し、それを手に取る。
     何をするのかと見守っていると、彼は私の左手を顔に近付け、薬指に唇を寄せたのだ。
    「え、え、えと」
     突然、手の指にキスをされ、頭の中がこんがらがる。幼い頃絵本で読んだ事のある、王子様に手の甲へキスを贈られるお姫様のようだった。
     どうしてこうなった。もしかしてストーカーか? と、頭を過ったが、今までそんな気配は感じなかったし、それ以前に彼の青い瞳は純粋にキラキラと輝いていて、憎む事が出来なかった。
     そういえば、この青い目、見覚えがある。何処で見たんだっけ。
     考えていれば、彼は掴んでいた手を優しく握り直して
    「イチカと、散歩が、したい」
     と、真っ直ぐな青い瞳で言われ、首を縦に振るしか術がなかった。

     この後、動物病院で青いわんちゃんに会いに行かないといけないのだけど、何故だか、既に戯れている気分になっていた。
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