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    ブラネロ♀webオンリー
    「Bouquet for Navy blue」3 展示作品
    素敵なイベントをありがとうございました。

    ネがバレンタインのチョコレートを渡そうと奮闘するお話です。
    前作とほんのり繋がっている設定ですが、読んでいなくても大丈夫です。
    ※ネが先天性女体化

    ビターチョコレートの難題「き、緊張する……!」
     ネロは、マフラーに顔を埋めてそっと息を吐き、必死に自分を落ち着かせようとしていた。
     二月の冷たい風が吹き付ける。コートの前を手で寄せ合わせながら、川沿いの道を足早に歩いていく。待ち合わせの場所まで、あと少し。きっともう待っているであろう男の姿を想像すると、自然と口角が上がってしまう。それと同時に、枕に顔を押し付けて叫び出したくなるような衝動に駆られる。心臓が口から飛び出しそうなくらい、緊張している。今日のために準備した小さな箱を、鞄の上からそっと撫でる。……うん、ちゃんと冷えてる。
     
     賢者さんの世界では、二月の中旬に「バレンタイン」という催しがあるらしい。世話になっている人や、家族や友達、そして、意中の人物に、チョコレートの菓子を送って気持ちを伝える日。「これは義理チョコじゃな」「これは友チョコ!」「「そしてこれは、双子チョコ~!」」なんて、スノウとホワイトがはしゃいでたっけ。双子の言葉を借りるなら、ここにあるのは――「友チョコ」。そういうことにしておきたい。

     ***
     
     ある日、ファウストから「ブイヨンの見本市の招待チケットを貰ってほしい」という申し出があった。任務のお礼にと、中央の国の料理人から貰ったものらしい。
    「えっ、いいの? 先生は行かないのか?」
    「僕よりもきみの方が、上手く役立たせることができそうだからな」
    「先生……!」
     早速、お礼にどんな料理を作ってやろうかと思考を巡らせていると、ファウストが少し口角を上げて付け足した。
    「二枚あるから一緒に行ったら? 審美眼は確かなんだろう?」
     誰のことを言っているのか、ファウストの表情を見れば自ずと察しがついた。反発するのも変だし、食い付くのもむず痒い。困った。だが、渡りに船とはこのことだ。ありがたく頂戴することにする。
    「そうさせていただきます……」
    「ふふっ。美味しい料理、期待してる」
     
     友人のサポートに背中を押され、ネロは決意を固めた。チケットをエプロンのポケットに忍ばせ、奴と遭遇する機会を今か今かと待つ。しかし、そういう時に限って、ブラッドはなかなか姿を現さなかった。急な任務が舞い込んで入れ違いになったり、盛大にくしゃみをして二晩ほど帰ってこなかったり。やっと顔を合わせたと思ったら、不機嫌なミスラが魔法をぶっぱなして喧嘩になっていたり、リケとミチルにつまみ食いの現行犯で追い回されていたり。そうこうしているうちに、見本市まであと二日になってしまった。
     こうなったら直接部屋を訪れて誘うほかない。風呂上がりに髪を拭きながら廊下を歩きつつ、なおも逡巡していると、階段の踊り場でばったりとブラッドに出くわした。
    「うわあ!?」
    「んだよ、幽霊見たみたいな反応しやがって」
     怪訝そうな顔で見られ、思わずぱっと目を逸らした。よりによって、こんな油断してる時に!
     元々しっかり化粧をするタイプではないが、それにしたって無防備すぎて恥ずかしい。何にも気にせず、男所帯で過ごしていた頃が懐かしい。魔法舎で、再び共に過ごすようになってからというもの、いまいちこの男との距離感が掴めずにいる。それでも、何かにつけて救いの手を差し伸べられているのは確かで。賢者さんから聞いたバレンタインにかこつけて、日頃の感謝を伝えたいと思った。高鳴る鼓動の音には、聞こえないふりをして。
    「おまえ、何か俺に用事あったか?」
    「へっ? な、なんで?」
    「いや、最近よく目が合うから、なんか言いてえことでもあんのかと思ってよ」
     バレてら……。ならば、と腹を括り、ぐっとブラッドを見据える。が、やっぱり気恥ずかしくなって目を逸らす。逸らしながら、口を開く。
    「あの、さ。明後日、空いてる?」

     ***

     こうして、なんとか、最初の難関は突破することができた。
     ブラッドによると、昼過ぎまで奉仕活動をさせられる予定があるらしく、その後なら空いているとのことだった。丁度いいので、その間にチョコレートを作ることにした。
     料理は慣れたものだが、菓子作りとなると話は変わってくる。材料をレシピ通りの分量できっちり揃えなければならないし、一つ一つの行程も丁寧に行わなければならない。とはいえ、材料が次々と姿を変えていく様は、その手間をも忘れさせるほどに興味深いものだった。温度計と格闘しながらテンパリングして。甘すぎるのは好みじゃないから、ビターな味に整えて。リキュールを混ぜたガナッシュに、何層にもチョコレートのコーティングを重ねて。目でも楽しめるように、一つ一つデザインを変えて。そうして作ったボンボンショコラは、まるでクロエの扱うボタンやブローチのように色とりどりで美しく、我ながら上出来だと思えた。中央の国の雑貨屋で見つけてこっそり買っておいた、凝ったデザインの小箱に、ボンボンショコラをそっと並べていく。崩れないように蓋をして、箱の周りの空気を魔法で冷やす。あとは、頃合いを見て渡すだけ。それが一番、難題な気がするけれど。

     待ち合わせ場所の噴水が、広場の木立の隙間に見えてきた。思ったよりチョコレート作りに時間が掛かってしまった。きっと待っているだろう。
     ようやく噴水前に辿り着くと、手触りの良さそうな黒のコートに身を包んだブラッドが、手持ち無沙汰そうに立っていた。近付くと、ブラッドがわざとらしく片眉を上げて首を横に振った。
    「待ちくたびれたぜ、お嬢さんよ」
    「うっ、悪かったって……」
    「冗談だ。エスコートしてくれんだろ?」
     芝居がかった仕草で、さあ手を取りなさいと言わんばかりに差し向けてくるのを、ふんと無視する。このくらいの振る舞いは許されるはず。案の定、ははっと笑って背中をばしんと叩いてきた。緊張を解してくれたのだろうか。そこからはもう、いつものブラッドだった。

     ブイヨンの見本市の会場に着くと、温かないい香りが漂ってきた。入り口のスタッフにチケットを渡し、中に入る。会場の中には、簡易的な店舗がいくつも軒を連ねていて、中央の国の市場のように活気があった。見たことのない野菜や香辛料が並んでいて、思わず目を奪われた。どの店舗でも、大鍋でブイヨンがグツグツと煮立てられ、料理人たちがせっせと灰汁を取っている。
     とりあえず、真っ赤な野菜が目に眩しい店舗に並び、試飲の小皿を受け取る。そっと口に運ぶと、野菜の見た目からは想像できないような繊細な味わいが、口一杯に広がった。店主らしき人に声を掛け、真っ赤な野菜をいくつか買ってみる。下拵えの方法や合う料理を聞き、ほくほく顔で次の店舗に足を向ける。
    「生き生きしてんな」
     ブラッドにそう声を掛けられた。まずい、誘っておきながらちょっと放っておいてしまった。はっとしてブラッドの方を見ると、柔らかな表情を浮かべていた。「明日の飯が楽しみだ」と、ブラッドがからからと笑った。
     
     いくつか店舗を回り、ブイヨンを試飲していく。
    「ん、これ、あんたも好きそうな味だ」
     チキンと白ワインと、数種類の香味野菜が合わさって、いい味が出ている。そのまま酒の肴にできそうなそのブイヨンは、ブラッドの口に合いそうだ。もうひとつ小皿を貰おうと、店番に声を掛けようとすると、横からすっと腕が伸びてきた。ブラッドが、私の持っていた小皿を奪い、口元に運んでぐいっと傾けた。
    「ちょっ、それ……!」
    「ん、美味いな! このまま酒の肴にできそうだ」
     飲みかけの小皿を奪われて飲み干され、呆然とする。なんてことをしてくれるんだ、この男は……!
    「さすが奥さん、旦那さんの好みをよく知っておいでで!」
     続く店番の言葉に、軽く打ちのめされた。完全に勘違いされている。
    「いや、悪いんだけど私たちは……」
    「おう、いつも助かってんだ。美味い飯にありつけんのはありがてえよな」
     肩に手を回され、ぐっと引き寄せられた。「お熱いことで!」なんて、調子の良い店番の声が響く。居たたまれなくなって、そそくさと粉状のブイヨンを買い求め、そのまま店舗を離れた。
    「おい、何勝手なこと言ってやがる!」
     ブラッドを睨み付けながら、小声で怒りをぶつける。
    「おっかねえな。いいじゃねえか、減るもんでもねえし」
    「減るよ! こう……何かが!」
    「へいへい、そうですか」
     お手上げのポーズで、ブラッドが離れていく。全く、油断も隙もありゃしない。次の店舗に向かおうとすると、何かを置いてきた感覚に襲われた。下を向くと、戦利品を入れて持っていたはずの紙袋がない。慌てて振り返ると、ブラッドが飄々とした顔で紙袋を抱えていた。
    「いつの間に。悪いな」
     紙袋を預かろうと手を伸ばすと、ブラッドが片手をぞんざいに振った。
    「いい、いい。じっくり見てな」
    「あ、ありがとう……」
    「おう」
     ……全く、調子が狂う。

     ***

     見本市を堪能し、会場を後にする。外はすっかり夕暮れになっていた。
    「付き合ってくれてありがとう」
     おう、とブラッドが答えるのを聞きながら、再び緊張が襲ってくるのを感じていた。本題はここからだ。さて、いつあれを渡そうか。
     私が口を開く前に、ブラッドが言葉を発した。
    「まだ時間あるか?」
    「え、あ、うん」
    「飯食いに行こうぜ」
    「今から?」
    「ああ。今日は飯当番じゃねえんだろ?」
    「あー、うん。カナリアにお願いしてある」
     思わぬ誘いに面食らいつつ、嬉しさが込み上げてきて、こそばゆい気持ちになった。それに、飯の後なら自然な流れで渡せそうな気がする。行こうぜ、と歩み出したブラッドの背を追いかけ、飲食店が立ち並ぶ通りへと足を向けた。

     てっきり、表通りのどこかの店に入るのだと思っていたら、ブラッドはどこへも立ち入ることなく、路地を抜けて裏通りへと足を進めていった。こんな場所には来たことがない。閑散とした通りをしばらく歩いていくと、洒落たランプが吊るされた民家のような店の前で足を止めた。
     ブラッドが木の扉を押し開くと、閑散とした外とは対照的に、中は多くの客で賑わっていた。知る人ぞ知る名店、というやつなのかもしれない。表のものと似た形のランプが、そこかしこに吊るされていて、客席に明かりを届けている。
    「ベインで予約してある。二人だ」
    「かしこまりました。こちらへどうぞ」
     待つことなく、すぐに席まで案内される。通りが見渡せる、窓際の二人用の席に向かい合って座った。
    「予約してたのか?」
    「まあな」
     知らなかった。頬杖をつきながら窓の外を眺めるブラッドの横顔に、少しどぎまぎする。いつから、どうして、と聞きたくなるが、なんとなく聞き出せない。
     
     程なくしてメニュー表が渡された。少し手の込んだ料理の数々に、案外種類の多い酒類。堅苦しすぎず、安っぽすぎない、居心地の良い店だと感じた。料理を注文し、食前酒に口を付ける。甘やかな果実のフレーバーが、爽やかに広がっていく。
    「いい店だろ、ここ」
    「うん。居心地のいいところだな」
    「いつかおまえを連れてこようと思ってた」
     どくん、と心臓が跳ねた。不意打ちなんて、そんな、ずるい。顔に熱が集まるのを感じ、手の甲でそっと冷ます。火照りをごまかすように、華奢なグラスを一気に傾けた。
     
     間もなく、皿が運ばれて来た。温かな料理の数々に舌鼓を打つ。新しい料理が来る度に、二人で交互にその料理に合う酒を選んだ。美味い料理と程よい酔いのおかげで、普段より饒舌になった気がした。飲み過ぎにならないところで、後ろ髪を引かれながら店を後にした。
    「あー、食った飲んだ!」
    「ああ、美味しかった。連れてきてくれてありがとう」
    「いいってことよ」
     結局、御馳走になってしまった。せめて折半にしないかと伝えたのだが、面子を立てろと言わんばかりに、またぞんざいに手を振られた。もしかしたらその仕草は、ブラッドなりの照れ隠しなのかもしれない。知らない一面を見つけたようで、心が少し浮き足立った。それと同時に思い出す、鞄の中の小さな箱。そっと鞄に手を添える。よかった、まだ冷えている。指先に触れた冷たさに勇気を貰い、ブラッドのコートの裾をくいっと引っ張る。 
    「なあ、ちょっとそこの公園に寄ってかないか」

     ***

     こじんまりとした公園のベンチに、並んで腰掛ける。他人にしては気を許していて、踏み出すには勇気が要る、距離。
     ブラッドが魔法で召喚したグラス入りの水を口に含む。少し冷静になった頭で考える。
     
     ブラッドが不器用ながらも少し優しいのは、昔から。団にいた頃も、魔法舎暮らしの今も、いつも一定の気遣いを感じる。
     そして、最近、戯れにキスをされた。それだけ。
     からかわれているのだと分かってはいるけれど、どうにも離れられない。
     胸の辺りが切なく疼くのに、そっと見ない振りをする。その方が、傷付かないで済むから。

     これは、お礼。看病してくれたお礼。今日付き合ってくれた、お礼。
    「あ、あのさ……これ」
    「ん?」
     おずおずと、小さな箱を差し出す。ブラッドが受けとり、掛けられたリボンをほどいて、蓋を開ける。
    「これ、チョコレートか? おまえが作ったのか?」
    「う、うん」
    「菓子作りなんて珍しいな。ありがたく受け取っとく」
     あ、だめだ。たぶん伝わってない。
     今日は特別な日なんだと、ただのチョコレートじゃないんだと、そう言わなくちゃ。
    「ブラッド」
    「うん?」
    「それ、さ、えーっと」
    「おう」
    「……やっぱなんでもない、です」
    「あんだよ、言いたいことがあんなら言えよ」
    「いや、いいよ……」
     勇気が、しおしおと萎んでいくのを感じる。ああ。

     箱に目を戻したブラッドが、おもむろにチョコレートを一粒取り出し、手に入れた宝石を眺めるように、街灯の明かりに照らしている。宵闇に浮かぶ横顔が、とても綺麗だ。百年ぶりにすぐ近くにある横顔は、あの頃より幾分か柔らかくなった気がする。一方の私は、この男との距離感がすっかり分からなくなってしまった。誰より近くにいたはずなのに。誰よりも、分かり合っていたはずなのに。離れて再会してみれば、この男の一挙手一投足に振り回されて、頭を抱える毎日だ。自分で自分をコントロールできなくて、いつも自己嫌悪に陥る。不意に心を揺さぶられて、つい、かわいくない反応をしてしまう。心の内が漏れ出てしまわないように、何層にも壁を作って、その結果、自分の本心の在処を見失ってしまった。いや、見失った振りをしてしまう、いつも。そんな自分が、すごく、嫌いだ。

     不意に、ブラッドがこちらに顔を向けた。つられてブラッドの目を見つめた途端、唇に冷たいものが押し当てられた。
    「むぐっ」
     私が作った、チョコレート。これは、ブラッドのために作ったのに。ほとんど反射的に口を開いて、チョコレートを咥える。舌先でそっと触れる。ほろ苦い。ああ、もう。
     口をつけてしまったからと、しぶしぶ咀嚼しようとした、次の瞬間。

     
     目を閉じたブラッドの顔が近づいた。
     まつ毛が長くてきれいだな、と、ぼんやりと考えた。

     チョコレート越しに、柔らかな感触がそっと触れている。
     とろり、熱に溶かされる。
     にがい。にがい。にがくて、あまい。
     二人の間で、ビターチョコレートがその形を失っていく。

     
     チョコレートが口の端から溢れそうになるのを感じた。そっと唇が離れていった。
     ぼんやりとした視界の中で、長い指が伸びてきて、下唇の辺りが拭われるのを見た。そして、置き土産のように、舌で唇の表面をそっと撫でられた。

    「……泣くほど嫌だったかよ」
    「……え?」
     自分の頬に手を添えた。それでやっと、自分が泣いていることに気付いた。急いで両目から流れ落ちる涙を拭い取った。
    「いや、ちが、」
    「悪かった」
     もうしねえ、と小さく付け足された。違う、違うんだ。ちゃんと話したいのに、自分の意思とは裏腹に、涙がぽろぽろととめどなく零れ落ちていく。拭っても拭っても、涙は止まらない。終いには嗚咽まで漏れ出てしまった。その間ずっと、ブラッドの手が私の背中をそっとさすってくれていた。
     
     ***

     ネロの涙が止まった頃、ブラッドリーが、帰るかと立ち上がった。声にならない声と共に、ネロが頷いた。
     ブラッドリーが箒を召喚し、背中に掴まるよう小さく合図した。促されるまま、ネロも箒に跨がり、大きな背中にそっと手を置いた。ブラッドリーがその手を掴み、己の腰の辺りに回した。そして、地面を蹴って空へと舞い上がった。いつの間にか、空には薄い雲が広がっていた。雲と宵闇が、二人の姿を隠していく。

     二人が魔法舎に着く頃には、子供たちが寝る時間になっていた。ブラッドリーは、迷わず三階のネロの部屋の窓に飛んでいき、魔法で窓を人が通れる大きさに変化させた。部屋の中に静かに降り立ち、ネロを箒から下ろした。
    「おやすみ、ネロ」
     俯くネロの頭に、そっと手を伸ばしかけて、途中でその手を引っ込めた。くるりと踵を返して、ブラッドリーは再び夜の空へと飛び立った。

     甘くて苦い、チョコレートの香りが、静かな部屋にふわりと広がっていた。
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    tonoi00mhyk

    MOURNINGボス誕のつもりで書いてたけどなんかネが着火して迷走したのと、普通に大遅刻なのでぽぽい!
    好きなところはちょこちょこ書けました🙆
    ボス誕2023 今日はブラッドの誕生日。昨日から仕込んでおいて完成させた料理の数々を、飾り付けられた食堂のテーブルに次々と運んでいく。バースデーケーキもフライドチキンも、言われなくともたっぷり用意しているというのに、ついさっき、あいつは性懲りもなく盗み食いにやって来た。パーティーの直前ということもあり、さすがに胡椒は勘弁してやるかとカトラリーを持って追いかけ回していたら、なぜかミスラが満面の笑みでこちらを見て座っていたので、背筋に寒気が走った。ブラッドを解き放ってキッチンに戻るやいなや、食堂から爆発音と双子の呪文が聞こえてきた。半分くらい展開の予想がつきそうな気がしながら覗いてみると、今まさに音楽に合わせて踊り出そうとするように、ブラッドとミスラが手を取り合っていた。呆気にとられて見ていると、婿さんがチェンバロを取り出して、軽やかな音色を響かせた。誕生日祝いをするはずだった食堂は、あっという間にダンスパーティ会場へと様変わりした。訳の分からない状況に戸惑っていると、シノとヒースがとことことやって来て事情を説明してくれた。曰く。
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    tonoi00mhyk

    DONEブラネロ♀webオンリー
    「Bouquet for Navy blue」3 展示作品
    素敵なイベントをありがとうございました。

    ネがバレンタインのチョコレートを渡そうと奮闘するお話です。
    前作とほんのり繋がっている設定ですが、読んでいなくても大丈夫です。
    ※ネが先天性女体化
    ビターチョコレートの難題「き、緊張する……!」
     ネロは、マフラーに顔を埋めてそっと息を吐き、必死に自分を落ち着かせようとしていた。
     二月の冷たい風が吹き付ける。コートの前を手で寄せ合わせながら、川沿いの道を足早に歩いていく。待ち合わせの場所まで、あと少し。きっともう待っているであろう男の姿を想像すると、自然と口角が上がってしまう。それと同時に、枕に顔を押し付けて叫び出したくなるような衝動に駆られる。心臓が口から飛び出しそうなくらい、緊張している。今日のために準備した小さな箱を、鞄の上からそっと撫でる。……うん、ちゃんと冷えてる。
     
     賢者さんの世界では、二月の中旬に「バレンタイン」という催しがあるらしい。世話になっている人や、家族や友達、そして、意中の人物に、チョコレートの菓子を送って気持ちを伝える日。「これは義理チョコじゃな」「これは友チョコ!」「「そしてこれは、双子チョコ~!」」なんて、スノウとホワイトがはしゃいでたっけ。双子の言葉を借りるなら、ここにあるのは――「友チョコ」。そういうことにしておきたい。
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