眠りについた記憶と(仮)「ミカサ、来年のお前の誕生日、結婚しないか」
年下の留学生である恋人にプロポーズをしたのは彼女の帰国予定1年前の春。
嬉しそうに涙を流して答えてくれたのはその直後。
結婚の準備も佳境に入っているはずの冬の日、俺は一人雪の舞う中、街のクリスマスツリーを眺めていた。
彼女は今、何をしているだろう。
あぁ、友人たちとパーティをすると言っていたか。
今の彼女にとって俺は何かと世話を焼いてくれる知り合い。
「これが俺との運命、だろ。きっと」
あと少しだけ、彼女と過ごせる、それで満足だ。
別れの時まであと少し。
彼女は記憶を失っていた。
『眠りについた記憶と』
ミカサとの出会いは2年前、ミカサが大学の夏季休暇を利用しての短期留学中だった。
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