その先が見たいから「もう、行けるだろ?」
デッドマターとの戦いが終わった後、シキはそう言った。
頭の中の声が聞こえなくなり、一那自身、以前よりは人混みは怖くはない。行きたい所は本で読んだ中に色々とあったが、まだ1人では難易度が高い場所ばかりだ。
正直にそう伝えるとシキは笑いながら、毎回出かけるのに付き合ってくれた。
最初に行ったのは、国立大劇場の再開第一弾演目の歌舞伎だった。
イザヨイが持っていたチケットを奪っ……否、譲り受けたものだ。
華美な衣装を着た登場人物たちが目を引く演目で、大分前の歴史の話だった。戦いの場面が多くあり、以前の一那なら理性が持たなかったかもしれない。ただ言い回しが古かったためか、内容を理解するのが難しかった。
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