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    25🐯×17🐺のお話。その2。
    以前からリクエスト頂いてました出会った時の話を…楽しんでくれたら嬉しいです!

    年上彼氏と年下彼氏。2.
    .
    .
    環状線を通り抜け、民家も多くなってきた二車線の道路の左側を走る。その途中赤信号で止まった時に見た公園は、伏黒と初めて出会った公園で、当時の事を思い出した虎杖は、ふ、と声を出しながら表情を緩めた。

    その日、確か虎杖は土日祝日の3日間を会社が参加したイベントの代休で、翌平日の3日間で休みを与えられていた、そんな日だった。何もすることもなくただパチンコ屋にでも行こうかな、となんとなくスマホと財布だけ持って家から出て歩いていた。そして件の公園に差し掛かった時に、当時中学3年生だった伏黒が居たのだ。
    クリーム色のブレザージャケットを着て、つんつんとした髪型が特徴の少年は、公園に備え付けられているベンチに腰掛け足に白い子猫を纏わりつかせながら、細く綺麗な指でジェリービーンズを摘まみ、自分の口に運びながら時折子猫を撫でていた。その顔は穏やかで、美しい目鼻立ちが柔らかくとろけるのを見て、思わず足を止めてしまった。
    よく見ると子猫は後ろの片足を引きずるように少年の周りをくるくると歩いていて、それでいて足にごろごろと頭や身体を擦りつけては甘えた声でみゃあ、と鳴く。ビーンズを摘まんでいる指とは反対の手で子猫の頭や首を撫でると、少年の指を小さなピンク色の肉球付きの手で掴んでは軽く噛んで悪戯しながら子猫は地面にころころと転がった。
    ジャケットの色を見て、彼がどこの生徒かを考える。生憎虎杖はこのあたりの地域出身でもないのでしばらく考えていたが、クリーム色のブレザージャケットは早々汚れないような所のものだ。と考えて、ここから一駅先にある私立中学のものだった筈だ、と合点がいく。確かそう、私立・浦見東中学だったような気がする。秀才が集まると噂の私立中学。
    だとしたら、彼はこの時間に何をしているのだろうか。時刻は既に昼の11時を回っている。ド平日の水曜日。学生は授業を受けているはずなのに。そんな秀才集団の一人であるだろう少年はこんな所で。

    だが、そんな考えよりも先に虎杖の身体は勝手に動いていた。

    「それ、君の猫?」
    「………」

    彼は思い切り不審者を見るような目で虎杖を見てきた。先の柔らかい表情から一変。私立中学に通っているとは思えない、眼差しだけで人を射殺せそうな勢いである。

    「後ろ足、大丈夫?ちょっと引き摺って歩いてるよね」
    「…知らねぇ。野良猫だから親に見捨てられたんだろ」
    「そっか。懐いてるから君の猫なのかと思った。で、君が飼うの?」
    「……」

    少年は首を横に振った

    「飼う気もないのに優しくしてるの?それって逆にひどいと思うよ」
    「チッ…うるせぇな」
    「あー、悪い悪い。言い方悪かった。誰か面倒見てくれそうな人はいないの?」

    少年の首はまた横に振られた
    頼る人もいなければ、飼える環境でもない。でも、少年はなんだか子猫に自分を投影しているかのように見えて、これは救ってやらなきゃ。と無意識に思っていた。そう思ったらまたいつの間にか、勝手に身体が動いていた。
    少年に甘える子猫に近寄り、地面に膝をついて手を差し出せば子猫は指先の匂いをくんくんと嗅ぎ、それから虎杖の手に頭を擦り寄せた。子猫はごろごろと喉を鳴らしながら撫でてやられても良いぞ。とばかりにお腹を出してきたので、お腹も身体も少し撫でてから子猫を抱き上げて腕に抱くと子猫はよじよじと虎杖のパーカーに爪を立てながら登ってきたのだ。
    時折爪がひっかかる痛みにイテテテ、と声を出しながら我慢して自由にさせながらも落ちないように手を添えて子猫を支えながら公園を後にしようとすると、後ろから少年の焦ったような声でどこに行くんだよ!という言葉が投げられた。

    「君もおいで、一緒に行くよ」
    「は?どこにだよ」
    「動物病院。野良だったんでしょ?お腹の中に虫いないかとかさ、足の事とか見てもらわなきゃ」
    「そいつ、保険に入ってないんだぞ?治療費も診療費もバカになんねぇよ!」
    「いーよ別に。俺休みの日にたまにパチ行く位の趣味しかないし。あ、あと筋トレ」

    あとパチ行ったら絶対2倍以上になって返ってくるし
    それは言わずにすたすたと先を歩けば、少年は後ろから小走りで付いてくる。野良猫よりよっぽど野良猫らしいその姿がなんだか可愛く思えてしまって、途中振り返って少年を見るとなんだよ?と言いたげなその視線が尚のこと警戒心の強い野良猫そのもので、思わず頭を撫でてしまっていた

    「…ッなにすんだよ!」
    「あ、ごめんごめん。君の方がよっぽど野良猫っぽいなって思ってつい」
    「つい、じゃねぇよ!俺は猫じゃねぇ!」
    「ほらほら、フーッてしない。猫そのものじゃん」
    「うるっせぇな!」

    パシン!と払い除けられた手もなんだか面白くなってしまって、虎杖は大声をあげて笑った

    「俺、虎杖悠仁!君は?名前くらい教えてよ」
    「…伏黒」
    「下の名前は?」

    少年はやや嫌そうに顔を歪める。
    キラキラネームなのかな。と虎杖は勝手に予想を付けたが、それは大きく外れることになる。

    「……恵」
    「え、本名?」
    「そうだ」
    「伏黒恵かぁ、綺麗な名前だね。似合ってる」
    「にっ…」

    少年、こと伏黒は女みたいだ。とバカにされると思っていたのか、予想外の虎杖の反応に目を白黒させて口をぱくぱくと動かして声にならない声をだしている。
    現に伏黒の名前はよく女性と間違えられていたし、舐められる事も多かった。それを全部返り討ちにしてきたけれども、正直この名前は一生かかっても好きになれないだろうな。とすら思っていた。それなのに、目の前にいる男、こと虎杖は普通の顔をして綺麗な名前だと、似合っていると賞賛してきたのだ。
    大人としての余裕なのか、はたまた天然の発言なのか。伏黒にその真意は分からなかったけれども、虎杖から受ける賞賛は悪くないかも、と思ったのは確かだった。

    それからややあって、動物病院に到着した。伏黒は虎杖の後に続いて院内に入り、診察待ちをしてお利巧に床にお尻をつけて座っている大型犬を見てそわ、と気持ちが浮足立った。大好きな大型犬が目の前に居て、ちょっとだけ気持ちが浮ついている間に虎杖は問診表にすらすらと大き目で読みやすい文字を書き連ねていた。
    受付で子猫が野良猫な事、足の状態の検査とお腹の虫の検査、持病が無いかも調べて欲しいと虎杖が看護師に伝えると、看護師は少し困った顔をしながら虎杖に問うていた。

    「野良猫を拾った、とのことですが…保険等に加入していないのであれば、本日の診療費や検査費用は100%全額負担となりますので…多額の費用がかかりますが、その覚悟はおありでしょうか?」
    「ええ。そのつもりです」

    虎杖はにこりと笑って答える
    その姿を見て、看護師は少しだけ表情を緩めると具体的に検査内容や診察のことなどを話してくれた。伏黒もそれを聞きながら、視線は大型犬の方を向いていた。じっと見つめていると、大型犬も気が付いたようで床にくっついたままだった尻尾がゆるゆると上がり、ぱたぱたと尻尾を揺らめかせた。
    飼い主の40代くらいの女性はそばにいる愛犬が急に反応を示したので何かあったのかと視線を上げれば、受付前で青年と一緒にいる少年がキラキラした瞳で愛犬を見つめていたので、思わず笑ってしまった。

    「レオ、綺麗なお兄さんに見つめられて嬉しいね」
    「わふっ」

    愛犬の背中を撫でれば、更に嬉しそうに尻尾が揺れるスピードが上がる。
    伏黒は指摘された事に驚いたと同時に、そんな声をかけられてしまう程見つめていた事に急に申し訳なくなり、すぐに女性に謝罪をした。

    「す、すみません、俺凄い見てましたよね…不快になられたらすみません」
    「いいのよ。レオも凄く嬉しそうだもの。犬の事が好きな人が分かるのよね」

    ね、レオ?と言って女性も嬉しそうに自分の愛犬を撫でる。
    その様子を虎杖は看護師の言葉を聞きながら横目でちらちらと見ていた。

    「…はい、説明は以上になります。お名前の候補はありますか?」
    「名前…ねぇ、名前決めてた?」
    「…あ、名前?決めてねぇよ」

    虎杖はフラフラと犬の方に近寄って抱きつきそうな伏黒に問うたが、現実に戻ってきた伏黒の答えはいたってシンプルだった。

    「付けてなかったの?」
    「付けてない。付けたら愛着沸いちまうから…」

    確かに飼える見込みのない子猫に名前をつけた所で可愛がったとしても、無意味なものである上になんと残酷なことだろうか。それは人間にも動物にも言えることで、小さいうちは可愛いからと言って何でも与えるが、大きくなったらそれをやめてしまう人間も多い。
    伏黒もそれは理解しているし、そうはならないように餌付けなどは行ってはいなかった。
    虎杖はその理由を噛み砕いて飲み込んだ。

    「そっか。でももう俺が飼うから付けていいよ」
    「…いや、止しとく。お前が決めてくれよ、世話してくれんだから」
    「そ?んじゃ…どうしよっかな…」

    子猫はカウンターに乗せられて看護師の女性に撫でられてうっとりと目を閉じている。
    時折開かれるその目は金色と緑色のオッドアイで、ビー玉みたいだ。と虎杖は思った。そしてふと思い出す。先ほど伏黒が食べていたものを

    「…ジェリー」
    「ジェリーちゃんですね。良かったね、可愛い名前だね」
    「みゃう」

    ごろん、と子猫ことジェリーはお腹を見せて寝転がった
    横から手を伸ばして子猫をお腹を擽りながら伏黒が口を開く

    「なんでジェリーなんだ?」
    「ん?目の色。あとさっき食べてただろ」
    「さっき?」
    「ジェリービーンズ。俺がたまたま見た時にさ、黄色と緑だったから」
    「………いつから見てたんだよ」
    「え、わっかんね」

    そんな会話を聞いても看護師はニコニコと笑みを浮かべているだけで、スルーを決め込んでいた。それから名前呼ぶまでお待ちください。と言われて二人並んでソファに腰かければ子猫は再び虎杖のパーカーをよじよじと登り始めた。

    「お前さんそれ好きね」
    「おい、それはキャットタワーじゃねぇぞ」
    「人間キャットタワー?いいね。我慢比べでもするか?」
    「やめろよ」

    人間キャットタワーの言葉に、伏黒は声を上げて笑った。ついに肩付近に辿り着いた子猫は、少し頭を下げた虎杖の首元を行ったり来たりを繰り返している。
    少し頭を下げたせいでずれた視線。伏黒は相変わらず子猫ばかりに目が行っているが、瞳を見れば綺麗な翡翠のような色で、思わず目が奪われた。そしてふにゃりと笑うのだ。年相応に。
    可愛いな、と思った。今この肩に乗っている子猫よりも、子猫みたいなこの子が。
    急にそんな事を思い始めた虎杖は焦ってその考えを打ち消そうとした。だって可愛いと思ってしまったのだ。猫よりも猫な彼の事が。無理だ。これは一目惚れかもしれん。

    「こら、ジェリーそこから降りろ。ノミとかダニいたら大変だろ」
    「あーダニはちょっと勘弁かな。噛まれるじゃん、アレ」
    「んにゃぉ」

    ジェリーは渋々、といった様子で虎杖の肩から降りると開いていたパーカーのポケットに頭を突っ込み、もぞもぞと入り込んでいった。

    「お、良い場所見つけたな」
    「ここにいっつも手突っ込んでんだけどさ、たまに財布とスマホとか全部入れちゃうからちょっと伸び気味だったんよね」
    「ジェリーでさらに伸びるな」
    「うーん、重さが倍だもんね」

    そうやって少しの間待っていると、虎杖ジェリーちゃん、と名前を呼ばれた。
    虎杖だけが行くものだと思っていた伏黒は、座って待って居ようと思っていたのだが虎杖が不思議そうな顔をして『伏黒も行くんだよ?』と言うので、その言葉に甘えて共に診察室へとはいらせてもらうことにした。
    ポケットから出されたジェリーはウロウロと診察台の上を歩き回ったかと思うと、立ち止まったタイミングで体重測定機能付きの診察台で体重を計り、そのまま体温測定の他に血液検査をし、更に病院の好意でジェリーにシャンプーを施してくれる事になった。
    レントゲンを撮ってからシャンプーをし、その間に検査結果が出るだろうと言われ、二人は一度診察室から出て待合室の椅子に腰を下ろして待つことにした。

    「…あの、さ。高校生になったらバイトして、今日の分必ず返すから」
    「え?別にいいよ。気にしなくて」
    「でも、」
    「良いって。あ、でもたまにはさ、うちにおやつ持って遊びにおいでよ。俺社会人だし夜遅く帰ってくることもあるから、満足にこいつと遊んでやれない事も多いだろうからさ。それでいい」
    「…分かった」

    伏黒は視線を彷徨わせながら、渋々といった様子で頷いて返事を返してきた。


    診察の結果ジェリーのお腹には虫などもおらず、大きな病なども抱えていなかった。そして懸念していた足は捻挫のようなものだったので、すぐに治った。今は元気に自宅で愛犬と走り回っている。


    そうだ、そうやって出会って、本当に伏黒は虎杖の家に通うようになって、いつの間にかキスするようになって。変な表現かもしれないけれど、会うたびに綺麗になっていく伏黒にどんどん惹かれていって、年の差だとか、同性だとか、そんなもんなんか構わないと思って告白したんだった。
    告白したあと、驚いて目を丸くして耳まで顔を真っ赤になった伏黒の顔は今でも覚えてる。蚊の鳴くような声で『俺も』と言った声も全部、だ。


    信号は青になり、またゆっくりとアクセルを踏み込んで緩やかに車は走り出す。
    たった2年前くらいの話なのに、懐かしく感じるのはそれだけ伏黒との時間を密に過ごせているからなのだろうな、と虎杖は思う。
    隣の助手席で伏黒はスゥスゥと寝息を立てながらぐっすりと眠っている。家に近づけば、車の音で帰宅に気付いた二匹が出窓から顔を出して待っている。可愛いそのシルエットが見られないのは少し可哀そうだけど、伏黒の事は自宅に着いたら自分がキスで起こしてやろう。そう思った。





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