覚えてられっかそんなもん・
年の瀬が間近に迫った十一月。極道に繁忙期など……と思うかもしれないが、左馬刻はこの年で一番忙殺されていた。
「テメェ芋引くんじゃねーよクソが」
暗い寒空の下で腕を折った相手を蹴倒し、その頭を躊躇なく踏み潰した。周りには同じくぼろ雑巾のように男たちが伏している。今日は早朝から目が回るようだった。
「ったく、ちまちま来んじゃねーよ。ガッとまとめて来いや」
ジッポをカチンと鳴らして溜息と紫煙を同時に吐いた。
午前四時、抗争相手の事務所へ二tトラックで、左馬刻直々にゴアイサツに伺うところから始まった。それからは互いのシマに乗り込んだ害虫駆除に汗を流し、昼時にはいつもの中華屋でチャーハンと餃子をかき込みながら突入してきたコバエを叩き潰した。片手にチャーハンもう片方にレンゲを握り締め、椅子を蹴飛ばし呆気に取られている舎弟に発破をかける。
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