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    Kona_Sousaku

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    Kona_Sousaku

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    ウチよそ
    🚬が🥩🔪くんについて色々考えるお話です
    長いかもしれない

    煙草を更す悪魔は人喰い人間をどう思うのか天南星 - 熱帯や温帯で見られ、東アジアや北米、日本等に分布する植物。
    秋に仏炎苞は枯れて朱色や赤の熟した果実が目立つようになる。球茎の細胞はシュウ酸カルシウムの針状結晶などをもち有毒である。

    偶然だった。
    城を装飾するために見合う花を探そうと植物辞典を引いたら、何とも見覚えのある文字がそこにはあったのだ。
    テンナン、あのカニバ野郎の名前だ。

    「あいつの名前、花から取ってきたのか...はっ、あれに花とか似合わないだろ」

    あいつの人相から考えて最も離れたイメージに思わず笑いが漏れる。
    儚く美しい印象を与える花に血みどろな殺人鬼はそれこそ水と油だ。どうしても結びつかないあいつの人物像を浮かべながら、今日で何本目かも分からないタバコを更す。
    そういえばあいつもタバコを吸っていたな。そんな他人事のように考えて煙を外に吐く。この瞬間も自分と同じようにあいつも一服しているのだろうか、なんて恋に夢中な乙女が思いそうなことと自覚したらバカみたいに一人では顔を赤くしてしまう。

    「いい歳した悪魔が何考えてんだか...第一あいつなんて好きじゃねぇし。あんなカニバ野郎なんざ...」

    口を開けば開くほどそういう気持ちになってきて、忘れるようにタバコを更す。が、考えるきっかけがタバコだったのだからさっきの繰り返し。またあいつを思い出して己のバカさに呆れてくる。
    考え直せ、あいつはカニバリストで罪無き人を殺す生粋の殺人鬼なんだ。しかしそれよりも一番気に食わないのは、おれに対するあの小馬鹿にした態度だ。好きになる要素が皆無だろう。

    「何度あの態度にイラついたことか...人間風情が悪魔になんつーナメた口聞いてんだって話だし?」

    そう、"人間風情"がだ。
    あの態度にイラついた人間がいたとして、あいつは簡単になぎ倒してしまうだろう。一般人が簡単に勝てるような相手じゃない。
    じゃあ人間じゃないならどうだろう。
    あいつがもし悪魔の気に触れてしまったら?もしモンスターを煽ってしまったら?

    「......ま、おれには関係ないけどな」
    「何がでしょうか」
    「うおっ!?コ、コウハか...何だよいきなり?」

    深みを帯びた紫の線を揺らして、隣に立った我らが執事長のコウハ。声をかけられるまで全く気づかなかったので、正直めちゃくちゃビビったのは内緒だ。

    「仕事をサボって一服している悪魔を見つけたと報告がありまして。まったく...貴方も懲りませんね」
    「うぐぅ...すまねぇとは思ってるよ。ただちょっと考え事を...」
    「考え事ですか?それはさっき言っていた"おれには関係ない"と何かつながりが?」
    「まぁな....」

    立ち話もなんですので、と他の従者に休憩を申し出たコウハはおれを連れて自分の部屋へと案内してくれた。タバコは吸うなとのお達しに苦笑してポケット灰皿で吸殻を処理した。
    コーヒーを淹れに行っていた部屋主も帰ってきたところで、さっきの考え事をあたかも独り言のように口に出した。

    「...知り合いにクソ生意気な人間がいるんだ。そいつは...あー、カニバリストでな。よくは知らねぇが食うために殺人してる野郎なんだよ」
    「カニバリスト...これはまた凄い方とお知り合いなのですね」
    「そいつ、本当にクソ生意気だからおれが悪魔って知ってても普通に煽り散らかしてくんだよ。
    人の揚げ足を取るわ、ヤニくせぇだの言ってくるわで...会ったら一言目に煽り言葉、うんざりだぜ」
    「ヤニ臭いのは事実ですが」
    「うるせぇな!...ほんと、人間風情が生意気だ。
    おれが本気出したら殺されるとか思わねぇのかな。いや...あの態度ならおれに殺される前に違う奴に喧嘩売って殺されるだろうけどな」
    「...」
    「ちっとは自分の立場を弁えろって感じ」
    「つまり...その方が心配、ということですか」
    「.........は?」

    心配、たしかにコウハは今そう言った。おれが、あのクソ生意気でどうしようもない人間を、心配している。
    どこをどう解釈したらそうなるんだ。お前おれよりも頭良いだろ、ついにイカれたのか。

    「いやいやいやいや...コウハちゃーん?ついに仕事のやりすぎで頭がイカれたのか?
    おれの話を聞いてどこでそんな解釈をしちゃったんだぁ?ん?」
    「どこも何も全て聞いてそう思いましたが。ふふっ...レン、貴方にそうやって思えるお友達が出来て安心しました」
    「お、お友達って...」

    嬉しそうに笑うコウハを目にして、思わず言葉に詰まってしまった。どうこう言えずに何かしようと思い、用意されたコーヒーを一気に飲み干して気持ちを落ち着けようとした。
    飲み干して落ち着きを取り戻しつつあるおれを確認したコウハは口を開いた。

    「本当に生意気でどうでもいい相手ならば、他のモンスターに殺されるかもしれないと考えたりしないでしょう。
    それなのに考えているのは...生意気だけれど本当はどうでもよくない相手だから、なのでは?」
    「そ、それは...」
    「レンがその方を本当に嫌いならばそれでも良いと思います。けど...嫌いでも気にかけてしまうのならば、その方が危険な時は守ってあげるべきです」
    「...でも!あいつとは悪友みたいなもんだし...それでも守るべきなのかよ...」
    「悪友もお友達でしょう。それに守るべきなのかは、レン自身が一番分かっているでしょう?」
    「......」
    「...人間界に?」
    「悪ぃ、ちょっと気分転換に行ってくる」
    「はい、お気をつけて。行ってらっしゃい」

    ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

    コウハの言葉は常に的を得ていると言わざるを得ない。
    本当はあいつのことがどうでもよくなかったんだ。人間のくせに悪魔のおれと対等に向き合ってきて、喧嘩には必ず乗っては誰かに止められて。
    おれは、学生たちのような"お友達の"距離に少なからず憧れがあった。
    軽い喧嘩をして、でも笑いあって。おれとあいつはそんな可愛い関係じゃないし、既に学生間の"お友達の"距離ではないだろう。それでも...

    「...あ?」

    人間界に悪魔とはこれまた珍しいことがあるものだ。
    溢れ出る隠す気もない魔力を辿ってみれば、その先にはただ一点を殺意で見つめる低級悪魔の姿があった。真昼間からこんなにも殺意マシマシなんてご苦労なことだ。

    「つーかあいつ誰見て...っ!」
    「やっと見つけたぞ...あのナタ野郎!!ようやくあの時の借りが返せる...!
    ちょっとちょっかいかけただけなのに...クソっ、首刎ねやがって...!!殺す、絶対に殺す!」
    「.........」

    これは驚いた。
    低級悪魔と同じ方向を向けばあら不思議、先程の話題の中心である憎きカニバ野郎がいるじゃないですか。まさかと思いブツブツと聞こえる声に耳をすませば、"ナタ野郎"などとあいつを示唆する言葉が聞こえてくる。
    もう喧嘩売ってるじゃねぇか。心配する以前の問題だったようだ。

    「...」
    あぁ、本当に世話がやける。

    「おい」
    「ころっ!?がはッッ...!!」
    「...あの人間に手を出すのはおれが許さねぇぞ」

    我ながら酷いことをしたような気もするが、ワンパンで吹っ飛んでのびる相手の不甲斐なさも問題だろう。人目につかない路地裏でなければ、捕まるのは間違いなくおれだった。
    でも、どうせ人目のつく所だろうとこいつことは本気で殴ってただろうがな。

    「だって、おれのーーーだから」


    「よう」
    「あぁ?脳筋悪魔がこんな所で何してんだよ、また迷子か?」
    「迷子じゃねぇよボケ!ただ...ちょっと散歩だよ」
    「ふーん......おい、何でついてくんだよ」
    「...うるせぇ」
    「キッッモ...!何だよ、今日のオマエ過去一気持ち悪ぃぞ......やっぱ迷子だろオマエ」
    「だからちがっ...いや、もうそれでいい。今日どっか行くのか」
    「いやオレも特に用はねぇけど」
    「じゃあなんか店案内しろ。お前の行きつけとかでもいい。その後に花屋行くからお前も来い」
    「はぁ!?何でオレがっ、うおっ!?おい!いきなり頭撫でんな!」
    「きゃんきゃんうるせぇな。店で好きなモン奢ってやるから黙って案内しろ。テンナン」
    「.........今日のオマエ、マジで気持ち悪ぃ。
    ...?つかオマエ今オレの名前っ...」

    ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

    「まったく、素直じゃありませんね。貴方は。
    そしてあの方がレンの...ふふっ、やはりハッキリ分かっているじゃありませんか」

    『だって、おれの友達だから』

    「何度も人間風情と言っていましたが、人間は脆いのだから無理するなと言いたかったのでしょう?人間は人間らしくいて欲しい、それこそ悪魔のような存在になるな、と...

    それにしても...名前、テンナンショウから取ったのでしょうか?有毒な植物の聞きますが...とても素敵なお名前ですね。
    私達悪魔には有毒なくらいが丁度いい。だから、テンナン様の毒が貴方には心地良い...そうなのでしょう、レン?

    さてと、今日のサボりには目を瞑りましょうかね。仕事に戻らなくて。
    ...お友達は大切にしてくださいね、レン」



    あとがき

    テンナンくんとレンのお話が書きたかった粉です。
    話の中でレンがテンナンくんに対してどう思っているのかを書きましたが、思ったりより友人としての好きと庇護欲がトントンでありましたね。
    人間風情、普段は人間のことを良くも悪くも言わないレンがこうした差別的な意味を持つ言葉を使っていたのを考えると、相当自分の心の整理がついてなかったのかなと。
    "守りたい"、"友達みたい"の気持ちがごちゃごちゃになって、上手い言葉が見つからなかった結果こんな酷い言葉になってしまったのかと思うとなんかちょっと不器用に感じます。いや本当に不器用。
    レンはこれからもテンナンくんと悪友のような関係性だと思いますが、しっかりとテンナンくんのことは大好き(本人は嫌いだと言ってますが)なのでよろしくお願いします。
    人間だから守りたいレンですが、その理由って格下に見られてるような気がして嫌がる人もいるような気がしますね。テンナンくんはそういうの嫌がりそう...
    陰ながらテンナンくんの安全を祈ってるレンでした。ありがとうございました。
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