彼岸の花咲く俺の中で夢見た世界が音を立てて崩れたのは自分の存在の要であった母が死んだ時だった。
蒼生の片腕となり共に国を豊にしていく世界。
様々な種族と手を取り合って共存していく世界。
族長にならなくても、母が自分を愛してくれる世界。
根本が崩れた時、崩壊した世界で俺は全てを憎み、そして全てを諦めた。
鬼人族を滅ぼしたことにより、鬼族が最強の種族と言っても過言ではなくなった。
しかし、最強の種族に鬼族が族長になったところでその先に何があったのか。
褒めてくれる母はもういない。
父はこの手で命を奪った。
大切な半身はもう手の届かない所へやってしまった。
この手の中には何一つ残っていない。
求めていたものはなんだったのか、もう覚えていない。
2026