九尾の日和と人の子ジュン小高い丘のてっぺん。大きな木の下に二人で腰をおろす。日和は珍しく緊張した面持ちでここまで繋いできたジュンの手をぎゅっと握りしめたままでいる。日和から感じたことのない雰囲気にジュンも緊張をおぼえる。
「ジュンくん。まずは、謝らせてね。きちんとぼくのことを話していなかったから、最近のぼくの態度できみを不安にさせちゃったんだよね。」
ごめんねと謝る日和がとても苦しそうに見えてその頬に手を伸ばす。触れる直前に伸ばした右手は日和に捕まって降ろされる。手を取られることで自然と上半身だけ向かい合う形になる。そのまま、苦しげな表情を繕うこともせずに日和は言葉を続ける。
「最近のぼくの話をする前に、過去のことを話さなきゃいけないね。おもしろいことなんて一つもない、長く鬱屈なお話になるね。・・・でも、できれば聞いてもらえると嬉しいね。」
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