初恋を何度でも防衛任務の時間が来るまでの間、隊室で雑談をしていた時だった。
「その時犬飼先輩がさ、」
「…犬飼さん?って誰でしたっけ?」
辻ちゃんがそう言った時、なんとも微妙な空気がおれたちの中に流れる。おれとひゃみちゃんで目を合わせた後、2人揃って辻ちゃんを見やった。
「……目の前にいるのが犬飼先輩だよ?」
困惑したようなひゃみちゃんの言葉に辻ちゃんは訝しげな顔をしておれの顔を見た数秒後、さっと顔を青ざめさせた。
「え……あ、そう…ですよね。俺、何言ってるんだろ…」
少しの違和感を覚えつつも、おれはそれを気のせいだということにして、珍しく狼狽える辻ちゃんを揶揄う方向にシフトする。
「辻ちゃんもそんな冗談言うんだね?」
「は、い…なんか、言いたく、なって…」
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