花見 雲ひとつない青空に、桜の花が泳ぐように揺れている。
「これ以上のお花見日和ってきっとないよ」
犬飼にそう言われて、辻󠄀は本部基地へ行く前に桜の木が立ち並ぶお花見スポットへと立ち寄った。
コンビニで買ったフラッペはまだ少し早かったらしく、飲んでいると肌寒い。
通り沿いにあるベンチに腰掛けると、犬飼も少し背を丸めて座った。
風が吹く度に桜の枝が揺れる。花が散ってしまうのでは、と辻󠄀がぼんやり見とれているその横で、犬飼の髪もふわふわと揺れている。
陽の光のせいで輪郭が透けるように輝いていて、辻󠄀は思わずその髪に手を伸ばしたくなった。
遠慮がちに襟足に触れると、犬飼は驚いたようで、
「えっ、なに? 」
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