けんかロージーとケンカした。
ケンカ、と言っても一方的に怒られただけで言い合いをしたわけではない。
よくロージーとは、些細な事でケンカをしてしまう。今回だってゲームで負け続けて苛立っていたので、少し手加減をしたらそれがバレてしまい、ロージーに怒られてしまった。まぁこれはこちらも悪かったのだが。
今は自室へとこもってしまった。謝ろうとして無理に押し掛けると余計に拗らせてしまう可能性が高いのでこういう場合は静かに待つ。
一時間ぐらい一人でゲームをしていると、後ろからゆっくり戸の開く音が聞こえる。ここで後ろを振り返ると部屋に戻ってしまうので気付いていない様子を装う。
そうしていると少しずつ足音が近づいてくる。やがてその気配は真横まで来て、こちらに背を向けたまま、ソファーにドカッと座った。
「………………」
「………」
お互い、すぐに声をかける事はなく、無言の時間が続く。
こちらからは声をかけない。ロージーが話したくなるまで待つ。しばらくして、話す気になったか、いつもボーラさんに怒られてるのが嘘のような小さい声で話かけてきた。
「……なぁ、キオ…」
「ん?」
「あのさ……えっと…」
視線は向けず急かす事もせず、じっと待つ。
やがて決心したかのように絞り出した声を出す。
「…………さっきは悪かった……」
「……いいよ、怒ってないし。俺の方こそ悪かったな」
ロージーの方を向くと膝を抱えて背中を丸くして小さくなっていたので思わず笑みをこぼす。後ろから少し乱暴に頭を撫でる。
「気を取り直してゲームの続きする?」
「………する。今度は手加減すんなよ!!」
「はいはい」
この後、ロージーが勝つまで何十戦と対戦される事になるとはこの時の俺は思いもしなかった。