終戦後フェルヒュー「ああ、これはベレス様。何かご入用でしょうか」
ベレスが店内に入れば、作業机の向こうから初老の男性が声を掛けてくる。
彼女は微笑みながら頷いた。
「ええ、代理で受け取りに。フェルディナントからの依頼品はもう完成しているでしょうか」
ベレスの声に男性はゆっくりと頷く。
彼は背後に並ぶ棚の中から、丁寧に一組のカップとソーサーを取り出してきた。
夜闇を思わせるような深い青黒のボディに、煌めく金のハンドル。
内は透き通るような純白で、絢爛過ぎず、しかし気品のある落ち着いた居ずまい。
ベレスが思わず美しさにため息を吐けば、男性は笑った。
「こちら『お姫様のために』と伺っております。お相手様の外見的特徴や内面などをお聞きしてデザインしましたが、さぞ彼が深い愛を捧げておられるお方なのでしょうね」
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