過去ログ3お化け屋敷には不釣り合いな光が満ちていた。赤とオレンジの光が溶け合い、お互いの身体を舐めるような炎が立ち上っている。あまりにも大きすぎる火の手に圧倒されスプリングトラップは一歩二歩と後退した。
―――一体ここで何が起こりやがった?
すっかり歩き慣れた薄暗い廊下はパチパチと火の粉が上がりスプリングトラップの毛並みに小さな焦げ付きを残していく。これだけでは済まさないとでも言いたげに火の手は確実にスプリングトラップを絡めとろうとしていた。
直接火に触れずともその熱は堪え難い。バネが弾ける音がする。熱に耐えきれなかった内骨格の補強に使われたバネが断ち切れる音だ。スプリングトラップがこの音を聞くのは久しい。だがそれは生々しく耳に残っていた。スプリングトラップの中に潜り込んだ男は、だ。
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