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    越後(echigo)

    腐女子。20↑。銀魂の山崎が推し。CPはbnym。見るのは雑食。
    こことpixivに作品を置いてます。更新頻度と量はポイピク>pixiv

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    越後(echigo)

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    ずやと山崎。全年齢小説。女装あり。山崎にだいぶ夢みてる。会話の仕方の元ネタは浅田次郎先生「天切り松 闇がたり」シリーズ

    ##或監察
    ##小説

    或顔貌の変遷 午前のかぶき町には、まだ静けさがある。眠らない町の看板は夜に明かりが灯ることが多いからだ。そんな中の『万事屋銀ちゃん』は不定休、開店時間不明、ついでに時価という回らない高級寿司屋級の運営を行い、従業員のメガネとかメガネは「よくこんなんでやっていけますよね。いややっていけてないよね。給料いつ払うんだよマダオ」とか、ぶちぶち文句を――いやこれは今はいい。とにかく、万事屋はいつでも依頼ウェルカムと門戸を広く開けている。
     今日は珍しく依頼人が、万事屋社長・坂田銀時と差し向かいで話し込んでいた。
    「――と、いうわけです。旦那。受けちゃもらえませんかね」
     ひととおりの依頼説明を終えて銀時の返事を伺うのは、真選組監察・山崎退だ。
    「いやー、俺はもらうもんもらえりゃいいけどね? おたくの多串くんとか大丈夫? 許可とれたの?」
     応接用のソファに座っている銀時は、鼻をほじりながら確認する。とても客への態度とは思えないが、これも万事屋と真選組は何かと悪縁があり、協力もするが対立も多い故だ。特にこの監察の上司、真選組副長土方十四郎は坂田銀時を目の敵にしているし、局中法度には「万事屋憎むべし(しかし新八君にだけは優しくすべし)」という文句まである。だが破ると切腹の法度を持ち出されても、山崎は涼しい顔だ。
    「今日俺は非番ですし。俺の私費をどの店でどう使おうと、副長には関係ありませんからね」
    「ふーん、そりゃ良かった」
     鼻くそをはじく。自分が聞いた割に興味もない様子の銀時に山崎は苦笑する。しかし、流れとしては受けてもらえそうだと判断し、話を詰めようと声をかけたとき
    「じゃあ……」
    「ただいまヨー!」
    「ただいま戻りました。定春、足拭こうね。あ、神楽ちゃん手を洗って!」
     散歩から帰ってきた神楽と新八の声が飛び込んできた。どたどたと応接室に駆け込んでくる三つの足音のほうに、銀時と山崎は目を向ける。同時に二人と一匹が顔をのぞかせ、新八が口を開いた。
    「――あれ、依頼人の方ですか?」
    「銀ちゃん仕事アルか?」
    「そーそー。お前らうるせーよ。すいませんね、お客さん」
     急に下手に出て軽く頭を下げ、しっしと子供たちを追い払う銀時に、山崎は紅を塗った口で微笑んだ。

    ◇◇◇

     散歩から帰ってきたら、銀時が珍しく依頼人と打ち合わせをしていた。どうやら飛び込みの依頼らしい。新八は二人分のお茶のおかわりを用意し、いただいたのだというまんじゅうをそのまま茶菓子にする。
    「新八ィ、私もまんじゅう食べたいネ」
    「一個だけね。残りはお客さんが終わってから」
     ケチ、と悪態をつくものの、依頼人に失礼があってはならないのは神楽もよくわかっている。おとなしく言うことを聞いた。
    「失礼します」
     お茶のおかわりを銀時と依頼人の前に置くのもずいぶん慣れた。
    「ありがとうございます」
     依頼人の女性が礼を言う。地味な服装だがそれなりに厚化粧で、もしかしたら少し年がいっているかもしれない。タバコを吸うらしく何本か灰皿に吸い殻が残され、臭いがあった。こうやってさらっと依頼人の特徴を確認して顔を覚えておくことで、のちのちの依頼にもつながるのだ。新八は深く頭を下げて、場を後にする。
     おそらくだが、夜の住人だろう。依頼は店の用心棒といったところだろうか。そういった荒事には銀時は新八と神楽を連れていきたがらない。二人を夜の仕事に連れて行くときは、マドマーゼル西郷とか、すまいるとか、それなりに信用できる場所や伝手だ。
     狭い万事屋では、二人が台所にいても依頼人と銀時の会話はほぼ筒抜けだ。しかし、子供が目の前では話しづらいことがありそうなときは、二人は自主的に下がることにしている。神楽の前にお待ちかねのまんじゅうを置くと、ヒャッホウと控えめに歓声を上げてガッツポーズをとった。彼女なりの気遣いが新八には微笑ましい。
     漏れ聞こえる内容は、やはり用心棒の依頼だった。どうやら依頼人はバーのママか小料理屋の女将か、そういった立場の人だ。最近チンピラに絡まれているのだという。店では他のお客の手前、邪険にしづらく、また今後を考えると警察等で大事にもしたくないということらしい。まあ、そこらのチンピラなら銀さん一人でなんとかなるよね。新八はお茶を飲みながら、帰ってくるまで今日は万事屋で神楽ちゃんと留守番かな、と考えていた。
     話の合間に銀時の相槌と軽い質問、ついでとばかり女性の愚痴があって、煙草を吸っているのだろう気配がする。依頼料を踏み倒しそうな人ではなさそうだ。取らぬ狸の皮算用だが、ついついそちらに思考が奪われてしまう。まず家賃、それから食費……と、架空の家計簿をつけはじめた新八は、隙だらけアル! と神楽にまんじゅうを盗られたのだった。

    ◇◇◇

     子どもたち二人が帰ってきてから、銀時の眼の前の男はがらっと空気を変えた。先程まではめかしこんだ男だった雰囲気が、今やすっかりかぶき町の女だ。話す内容だけでなく、声色も物言いも振る舞いも、すっかりチンピラに困らされているそれなりに若作りをした年増女将のそれで、銀時はひそかに、ジミー、やるじゃん。と舌を巻いた。
     適当につくり話に相槌をうっていたら、ずいっと山崎が距離を詰めてきた。
    「旦那、そのまま適当に相槌でも」
     驚いちゃあ、駄目ですよ。沈んだ声音は、響かなかった。どのような技術かわからないが、はっきりと内容が聞こえるのに、声は山崎の三寸周りで溶けている。これは台所には届かないだろう。手は煙草を取り、いかにも新しいものに火をつけました。という音が流れている。こちらも器用なものだ。
    「ではあらためて。小島屋の大旦那なんですが、こいつが攘夷浪士と癒着して武器の横流しをしてましてね。しかも神経質で常に帳簿をはなさない、ボディガードを複数雇ってるときた。しかし今夜、お気に入りの女がいる店にしけこむ予定を掴みましてね。そこがチャンスです。旦那はちょいとボディガードの目を引いてもらって、俺がその隙に帳簿をどうにかしますんで、合図を送ったら逃げてください。いいですか、あまり叩きのめしたりせんでくださいよ」
     後が面倒なんで、とまで一気に語ると、す、と山崎は身体を引いた。
    「――まったく、最近世知辛いったらありゃしませんよ。ねえ万事屋の旦那」
     そう思いません? 銀時が気づいたときには、目の前の厚化粧の女が慣れた仕草で煙草を吸っていた。

    ◇◇◇

     スナックお登勢の看板に火が入ったころ、身支度した銀時は二人に声をかけた。
    「ぱっつぁん、神楽、ちょっくら出てくるから」
    「ああ、依頼ですね」
     もうそんな時間なんだ。夕飯はいりませんよね? と銀時の背に確認の声がかけられる。
    「あーいらねいらね。奢ってもらうわ」
    「……まあそうでしょうけど、飲み過ぎないでくださいよー」
     手を振って答える銀時に、新八が釘を刺す。心配性の従業員にマダオは、わーったわーった、と適当に返し、玄関に手をかけた。もうすぐ宵の帳が落ちる。
    「あ、……次のツラがどんなか聞いとくの忘れたわ」
     地味なほうの顔を思い浮かべながら、銀時は頭をかいた。
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