在所 日中であるにも関わらず、そこは暗かった。
そこ、というのは掘っ建て小屋の中である。窓はない。粗末なつくりながら、壁板は重ねるばかりか布までも当ててある。何者をも通さぬと言わんばかりだ。
厳重に守られた室内には、いびつな鉄の塊が一山。傍目にはわけのわからぬ物体であったり、削り整え組み立てられて全容がはかれそうなものまで、雑然と積み重なっている。他にも壁際に銅や鋼で出来た糸を釘に引っ掛けて干してあったり、大小の歯車が木製から鉄製まで行儀よく並べられていた。なんとも面妖な空間だ。
三郎は一人でうろうろしても周りの大人から見咎められぬ年になったころ、「そこ」に初めて踏み入った。
最初は、見えぬ父の姿を探していたのだと思う。今まで入ったことのない小屋への好奇心もあった。だが、踏み入った後に心は一変してしまった。
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