レジェアルをプレイしてた時に考えてたやつ 初めてNo.836と顔を合わせたとき、その印象は最悪だった。
無愛想でほとんど口をきかないくせに、目ばかりギラギラしていた。
身に着けていたものは全て没収されたのか、真新しいお仕着せに身を包んでいた。
部屋に入った俺を見ても立ち上がらず、椅子に腰掛けたまま黙ってじっと睨み付けてきた。
それがNo.836だった。
「……ちょっと待ってください。おっしゃっている意味が分からないのですが」
俺はただ、相棒となる新人が入ったと聞かされていただけだった。だから面食らってしまった。
そいつの顔には警戒心がありありと浮かんでおり、口は話すことなど何もないと言わんばかりに真一文字に結ばれていた。
相棒というより、容疑者と言われた方が納得できるような有様だった。
「……もう一度、事の経緯を最初からご説明いただけませんかね」
単純に言っている意味が理解できなかったのが半分、信じたくないのが半分でそう尋ねたが、返ってきたのは同じ話の繰り返しと、覆らない決定だった。
目の前のこいつは、先日観測されたウルトラホールから落ちてきたFallだ。記憶を失っており、素性は一切不明。
かろうじて言葉を話すことはできるようだが、こちらの質問にはほとんど答えないという。
しかし厄介なことに保護施設への移送は頑なに拒否しており、こんな要求を繰り返すばかりだという。
「ただ生きるのは時間の浪費だ。そんなことは許されない。だからここで働かせろ。時間は貴重だ」
そんなわけで、相棒が決まっていない俺に白羽の矢が立った……ということだった。
――冗談じゃねぇ。
任務も仕事も手持ちの世話も、何もかも山積み状態だっていうのに!
(そのうえこんな得体のしれないFallの面倒を見ろってか!? 馬鹿じゃねぇの!?)
何とかしてこの難を逃れようと、必死であれこれ屁理屈をこねた。が、全てあっけなく突っぱねられてしまった。
それどころか今すぐ広い官舎に引っ越して、こいつと暮らせという。
「……正気ですか……?」
あまりのことに思わず絶句したが、何度聞き返しても命令は変わらなかった。
このFallを相棒とすること。
官舎を引っ越して二人で住むこと。
こいつの素性について気付いたことがあれば随時報告書を上げること。
要するに監視役をしろということだった。
散々言い訳と屁理屈を並べて必死に抵抗した上で、本当に嫌々、仕方なくこの件を承服した。
「……はぁ……。まぁ……じゃあ……よろしく……。俺はクチナシだ」
名乗りながら握手をするつもりで、そいつに手を差し伸べた。
しかしそいつは俺の手に一瞥をくれただけで、黙ったままふいと顔を背けた。
それきり微動だにせず、もちろん握手にも応じず、一言も喋らなかった。
(この野郎……!)
思わず差し出した手を拳に変えるところだったが、上層部の手前、すんでのところで踏みとどまった。
これが、自分でも驚くほど長い長い付き合いの、最初の一ページだった。