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    310mitotim

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    310mitotim

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    レジェアルをプレイしてた時に考えてたやつ。の続きです。
    さっそくストックが切れました。どうすんねん。

    レジェアルをプレイしてた時に考えてたやつ2 いつまでも名無しの権兵衛じゃ呼びづらいので、なんて呼んだらいいかを尋ねたら、そいつは黙って紙切れを差し出した。
     そこには「No.836」とだけ書いてあった。
    「……Fallの管理番号じゃねぇか。もっとこう……なんかあるだろ?」
     しかしそいつは口をかたく結んだまま、さもどうでもいいとでも言うような顔をしていた。
    「あー……もういいよ……。じゃあお前、これからNo.836だな」
     分かっているのかいないのか、それすらも読み取れないほど表情が欠落した顔で、No.836はわずかにうなずいた。



     それからというもの、俺は何とかNo.836の素性を聞き出そうと色々話しかけてみた。
     しかし報告書に書けるような話は何一つ出てこなかった。
     というより、そもそも会話が成立しなかった。
     No.836はこちらとコミュニケーションを取るつもりが一切ないようで、ただ「仕事をよこせ」としか言わなかった。
    (そんなこと言われたって、こんな奴に任せられる仕事なんてあるわけないだろ……)
     そもそもウルトラホールから落ちてからまだ日が浅い。
     体調面の心配もあるので、いいから休んでろと言って放って置いたら、今度は一切飯を食わなくなってしまった。
    (……こいつに倒れられたら、俺の責任問題じゃねぇかよ……)
     そんなのは御免なのであれこれ理由をつけて何とか飯を食わそうとしたものの、No.836は頑として受け付けなかった。
    「……ハンガーストライキのつもりか? 記憶も常識もないのに、そんなことは知ってんだなぁ、クソ野郎が」
     焦りと苛立ちでつい強い言葉をぶつけると、No.836は顔に怪訝の色を浮かべながら、俺の言葉なんて一切気にも留めない様子でこちらを睨みつけた。
    「働かざる者食うべからず、当然だろう。食べるものには限りがある。役に立たない奴は食うべきじゃない。そうしなければ全滅だ。俺は働いていないのだから、俺の分の食料は女子供に回せ」
    「……は?」
     ちょっと待て。こいつ、今なんて?
    「おい……おい? どういう意味だよ?」
    「……」
     しかしそれ以降、No.836は俺の問いかけに答えることは一切なかった。

     そんなことがあったもんだから、俺はNo.836に簡単な仕事を与えるようになった。
     部屋を片付けさせたり、風呂やトイレの掃除をさせたり、俺の手持ちに餌をやらせたり。
     どんな小さなことでも、仕事さえすればNo.836は納得して飯を食うからだ。
    「終わったぞ」
    「はい、どーも。飯食えよ」
     仕事と称した風呂掃除を終えたNo.836に夕飯が乗った机を指し示すと、No.836は無言で小さくうなずいた。
    (律儀なもんだねぇ……)
     No.836の仕事のために掃除の頻度が激増しているので、今やこの家は隅々までピカピカだ。
     むこう一週間は掃除なんてしなくてもよさそうなもんだが、No.836に飯を食わせるためにはやらせなけりゃならない。
     いっそこの官舎に住まう連中から金を取って、掃除でもさせてやろうか。そうすりゃ俺の小遣いも増える。
    (……Fallの説明が面倒臭すぎるからパス、と……)
     埃ひとつついていないソファに身を沈めて、黙って飯を食うNo.836を眺めながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。



     No.836は今でこそそこそこの仕事ができるようになったものの、最初のうちは本当に酷かった。
     風呂場のシャワーから出る水を信じられないものを見る目で凝視したり、トイレを流す音に飛び上がって驚いたりして、ウルトラホールの影響はこんなにも酷いものなのかと可哀想になるほど、No.836には常識がなかった。
     特に酷かったのはポケモンへの対応だ。
     俺の手持ちだと何度も説明しているのに全く理解せず、ボールからポケモンが出てくるたびに慌てて物陰に身を隠した。
     その身のこなしがあまりに機敏なうえに、ポケモンと交流を持とうという気が一切見えず、本当にこいつは何者なのかと、答えのない疑問を考え込むほどだった。
    (相棒ができて、仕事が楽になると思ったんだけどなぁ……)
     楽になるどころか、山積みの仕事に、さらに山積みの厄介ごとが足し算されただけだった。
    (あー……もうほんと、辞めてやろうかな)
     積みあがる業務量に限界を感じ、癒しを求めて手持ちのペルシアンをボールから出してやった。
     それを見てすぐさま物陰に身を隠すNo.836を眺めつつ、ゴロゴロと喉を鳴らすペルシアンの柔らかい毛並みに顔を埋めた。
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