氷爆石を探しに行く話(仮題) 小さなパンが二切れ、スクランブルエッグ、薄い野菜スープ。ふかした芋に塩を一振り。
できるだけ時間を掛けて食べようとしたが、簡素な朝食はものの10分と経たずに終わった。扉の向こうにトレイが消え、施錠の音と共に兵士の足音が遠ざかっていく。
再び一人になったマインズは、質素なベッドに寝転んで天井を仰いだ。やることがないのでただ徒に記憶を巡らせ、ここに来た日のことを思い出す。
あの日は正しく人生最悪の日だった。
『悪魔の島』に乗り込むからにはそれなりの覚悟をしていたつもりだが、いきなり乗っていた艦船を巨人に釣り上げられるなんて聞いていない。やっとのことで陸に上がれば、そこに待っていたのは若干頭のネジが飛んでいるんじゃないかと疑わしい隻眼の女と、マーレの軍人でもそこまでじゃないぞと言いたくなるほど凶悪な目つきの小男。笑えない冗談で歓迎され、この監獄に連れてこられたのがほんの十日ほど前。あのときは、本気で死を覚悟した。
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