「ふ〜かみん!」
明るく愛しい声が鼓膜を震わせると同時に、愛しい彼で埋まる視界。鼻腔は彼の甘い香りで満ち、それに伴って『幸せ』の気持ちがふんわりと膨らんだ。
「ん…みつお、くるしい」
「ふかみん、ぼ〜っとしてるんですもん…」
空き教室。机越しに身を乗り出した光緒の両手に頬を包まれ、じっと見つめられる。もうすぐ、唇が触れるかも。
「ん、ごめん、」
「いいですけどー、」
昼過ぎ、光緒とふかみはFYA'M'の練習の為に登校していた。夏期講習も先週で終わり、課題と部活のみが与えられた長期休暇の真ん中。『休み中は部室が申請制のため、生徒会の作業がある朝晴と由比も顔を出せる時間にしよう』と練習は午後2時集合になった。壁の時計に目を向ければまだ1時間半はある。
3327