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    ゆめさき

    星つむ3開催、おめでとうございます。
    源浮のみですが、少しでもお楽しみいただけると幸いです。

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    ゆめさき

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    ジュンブライベの浮葉さんSSRのカドスト第1話をもとに浮かんだネタ。

    帰りが遅くなった御門浮葉。それには堂本が思いよらない理由があり……

    ##源浮
    ##星つむ
    ##源一郎は出ていない
    ##堂本さんが目立つ

    理由「随分と遅かったな」

    日曜の昼過ぎに「用事がありまして」、そう告げて外出した御門浮葉がマンションに戻ってきたのは夕食の時間をとうに過ぎた頃だった。
    高校生にもなって門限だなんだ騒ぐつもりはないし、そもそも自分は彼の保護者ではなければ彼の帰宅時間をとがめられるような優秀な生活を送っているわけではない。
    ただ、自分の予想を数時間単位で超えているという事実を告げたかった。それだけ。

    「珍しいですね、あなたが私のことを心配するなど」

    堂本の言葉は御門にとっては意外なものだったのだろう。
    少し眉をひそめながらもこちらを見つめてくる。
    好意的でないのは相変わらずだが、以前よりはわかりやすく嫌悪感を出してきたように思える。

    「社長から連絡あったんだ」
    「随分、素直に話すのですね」
    「まあ、隠しておくほどのことでもないだろ」

    そう言いながら単刀直入に問いただす。

    「で、何かあったのか?」

    少なくとも彼は自分よりは社会性に長けており、出かける際にもどこへ行き、何時ごろ帰るのか丁寧に報告してくれる。
    そして、その予定が変化しそうなときは細かに連絡してくる。
    それがなかったということは、道中、何かあったと考える方が自然だ。

    「朝日奈さんにお会いしました」

    隠してもいつかバレると思ったのだろう。
    目の前の御門はすんなりと答える。

    「スタオケのコンミスね…… そりゃ、面白いことで」

    堂本は脳内で何度か見かけたことのあるスターライトオーケストラのコンサートミストレスの姿を思い浮かべる。

    「ええ。久しぶりにお会いしてあの秋のことを思い出していたら、つい寮まで送ってしまいました」

    御門のその言葉に堂本は内心あきれ果てる。
    自分たちが暮らしているマンションと星奏学院の最寄駅は路線が乗り入れしている関係で1本でつながっている。
    とはいえ、時間にすればかなりのもので、電車の乗車時間だけを考えても30分は掛かったかと思う。
    ましてや、駅からの距離を考えるとさらに時間は増す。

    「彼女のくちびるから紡がれる言葉は、源一郎の音が隠されている。そんな気がしました」

    それを聞いて納得する。
    かつて忠犬のように御門の家に仕えていた書生。
    ふたりの関係がかつてどのようなものであり、そして現在はどのようになっているのか細かいところはわからない。
    もっとも大した興味がないというのも本音ではあるが。
    ただ、意中とも言うべき相手の気配すら愛おしい。それで横浜まで女性を送っていったというのはご苦労と一言につきる。

    しかし、それを聞いてひとつの疑問も浮かぶ。

    「せっかくそこまで行ったというのに、会わなかったのか? あの親切なコンミスさんなら、呼び出してくれただろうに」

    リーガルレコードとしてもグランツ交響楽団としても、スターライトオーケストラの人間との接触は禁じてはいない。
    だけど、その言葉に御門は首を横に振る。長く垂らした三つ編みが揺れるのが印象的だ。

    「私と会っては彼の決意も鈍りますから」

    凛と研ぎ澄まされた声が響く。
    そして、それと同じ印象を持つふたつの瞳が自分を真っ直ぐ見つめてくる。

    「それに私とは会わない方がいい」

    それを聞いて思う。
    御門は鷲上のことを気遣っているようだが、本当は自分のことを語っているのではないかと。
    生まれたときから泥水の中で生き抜いてきた自分とは違い、蒸留水の中で生きてきた彼にとって、現在の環境に身を置くことは並々ならぬ決意と決断が必要だろう。
    そして、その墜ちていく様子は旧知のものには見られたくないはずだ。
    もっとも自分は優しい言葉を掛ける性格ではないので、あえて何も言わないが。

    「そうか」

    それだけを言う。
    そして、目の前にスーパーのビニール袋を差し出す。

    「ま、お坊っちゃんには申し訳ないが夕食だ。俺一人で食べるには持て余すのでな。これでも食べて元気出しな」
    「これはご丁寧に。ありがとうございます」

    それだけを口にして御門は背を向ける。
    これ以上話すことはないと言った風に。
    運命が動き出すにはまだ時間が必要。そんな初夏の夜であった。
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