「響はまるで、月みたいだな」
二人で過ごす、何度目かの夜。窓の外の月を見上げて、俺は言った。
「俺が?」
「ああ。いつも静かにそこにいて、俺を見守ってくれる。そんな在り方が、すごく、月に似てる」
「……なら、お前は太陽だな、サクヤ」
すると響がそう言って、俺を見返す。
「いつも俺の道行きを、先に立って明るく照らしてくれる。それが太陽のようだと、俺は思う」
「……褒めすぎじゃね?」
「いいじゃねえか、本心からそう思ってるんだから」
ストレートな褒め言葉に言い過ぎだと頬を掻けば、返ってきたのは更にストレートな笑顔で。それが恥ずかしくて、俺は響の顔がマトモに見れなくなってしまう。
「……アンタって、ホント、そういうとこだよな」
「……そういうとこって?」
「そういう鈍いとこだよ、バーカ!」
せめてもの仕返しと頭を胸の中に抱き込んだが、甘えてるとでも勘違いしたのか、響はよしよしと頭を撫でてくるだけ。……いつもこうだ。たった二歳しか違わないはずなのに、響は俺をまるで子供のように扱う。
それが、自分が男として響に負けている証明のようで、時々悔しくなる。
けど、例え今は男として敵わなくても——。
(アンタを幸せに出来るのは、この世でたった一人、俺だけだから)
そう心に誓って、俺は腕の中の愛しい人を、更に深く抱き寄せた。