蜻蛉を追いかけて 俺がその人と初めて出会ったのは、育った村がモンスターに襲われて滅び、生まれ故郷であるカムラに保護されてしばらくしての事だった。
変な人だと、最初は思った。顔を覆いで隠したその姿は、擦り切れた心が見ても奇妙なものだった。
『はじめまして、ですね、サクヤ殿』
背が高かった死んだ親父よりももっと高い背を屈め、視線を合わせ——もっとも目など見えないのだが——その人は口を開いた。
『……誰』
『某は、カゲロウと申します。少し前より、この里にてお世話になっております』
穏やかで、俺みたいなガキにも丁寧で、対等な接し方をして。そんな大人に会ったのは初めてだったから、不思議な感じがしたのをよく覚えている。
『……何か、用』
2828