嫌いが好きになった日 後編稽古が終わり、立花と約束していた19時半まで組長として書類を片付けようと思っていた。だが、フミさんに「今日は誕生日なんだからそれくらい明日でもいいだろ」と止められ、今は組長部屋で2人でお茶を飲んでいた。
「それにしても今年もすごいのたくさんいたな。特にジャックエースやってたやつなんか新人公演からの伸び、すごくないか」
「そうですね。あいつ、去年の織巻みたいに分からなければ躊躇わずに聞きに来るので他のやつより伸びがいいんですよ」
「へえ。あとは歌の上手いやつもいたな」
「ああ、あいつはもう少し肺活量が上がればもっと良くなりますよ」
「ふーん。ミツ、しっかり組長してんだな。きちんと一人一人を見てやれてる」
「僕なんかまだまだですよ。根地さんみたいにその子の可能性を見つけてあげれていないし得意不得意もまだ全然判断できていません」
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