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    きさら

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    きさら

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    2021
    ミツキサ 真ん中バースデー作品

    #ジャックジャンヌ
    jacquesJeanne
    #ミツキサ

    あなた色の宝石「美ツ騎さん、今日はおうちで過ごしましょう」

    朝食を食べている時、希佐にそう言われた。今日は珍しく二人ともお休みで久しぶりにゆっくりと二人きりで過ごせる日なのだ。

    「久しぶりのデートなのにいいのか?」
    「はい!この時期はいつも美ツ騎さんしんどそうですので。それに家なら誰にも邪魔されずに美ツ騎さんを独り占めできます!」

    今はもう五月の終わり頃。そろそろ梅雨入りになるのでここ最近、体調が悪かったのは事実だ。彼女に遠慮させてしまったのではないかと思い顔を伺うと優しい眼差しで微笑んでいた。

    「分かった。というかそんな顔されたら断れない」
    「え、どんな顔してます!?」
    「愛おしくてたまらないって顔」
    「美ツ騎さんだって同じ顔してますよ!!」

    そう彼女に返された。そうなのか、僕は彼女といる時にそんな顔をしているんだ。彼女といると自分の知らない自分を発見できる。いつもなら嫌だけど彼女が新しい自分を見つけてくれることはなんだか嬉しかった。



    朝食が終わり二人で後片付けをしてその流れで家事も終わらせてしまう。これが僕達の休みの日の日常だった。

    家事は出来る方がやる
    2人とも休みの場合は一緒にする

    同棲を始めた頃に二人で決めたルールだ。彼女も僕もそれなりに人気役者なので忙しいのはお互い様だ。だからこそ朝に一日の予定を伝え合い二人で相談しできる方がやるということになった。

    本音を言えば同棲するまで家事は苦手だった。だが同棲を始めてからは好きになった。彼女とやる家事は楽しかったし、一人でやる時も彼女のためだと思うと全く苦ではなくなったからだ。
    やってあげたいと思う相手がいるだけでこんなに変わるものなのかと美ツ騎自身驚いていた。

    「終わったら録画してた映画でも見ましょう」

    彼女と部屋の掃除をしている時、これからの予定を考えて嬉しそうに話す彼女をみて微笑む。

    (遠慮させたと思ってたけど希佐が楽しそうにしていて良かった)

    彼女はいつでも僕のことを考えて動いてくれていた。だからこそ僕のせいで彼女のやりたいことができていないのではないかと心配していたのだ。でも一緒にいれるだけで喜んでくれている彼女を見て幸せだなと感じていた。

    「美ツ騎さん?どうかしました?」

    いつの間にか彼女が目の前にきて僕を見上げていた。

    「幸せだなって考えていたんだ」
    「ふふ、急にどうしたんですか?でも私も美ツ騎さんと一緒にいられて幸せです」

    彼女ははにかみながらそう伝えてくる。そんな彼女が可愛くてぎゅっと抱きしめた。





    そして家事が終わり二人でソファーに座り、さっき話していた映画を見ていた。よくある恋愛モノだ。お供に入れた紅茶からは湯気が立っていて少し冷える体を温めてくれた。
    思ったより面白く集中して見ていたらあっという間に映画はもう中盤に差し掛かっていた。そんな時、希佐の携帯から通知音がなる。

    「あれ、フミさん?どうしたんでしょう?」

    そう言い、来たメッセージを読む希佐。そして微笑み僕に携帯を見せてきた。

    「見てください、美ツ騎さん」

    見せられた携帯を覗き込むとそこにはメッセージと写真があり写真にはフミさん、カイさん、ネジさん、織巻、そして世長も写っていた。
    文には「クロとカイで出かけてたらスーとソーシに会ったんだ。相変わらずスーは元気だな。ここにおまーとミツがいればクォーツ集合だぜ」なんてことが書かれていた。

    「うわぁ、お家デートにして正解だった。会ってたら絶対ネジさんと織巻がうるさいだろうし」
    「ふふ、でもみんな楽しそうですね」
    「・・・なぁ、お前。もしかして行きたいの?」
    「・・・え?まあ少し羨ましいなとは思いますけど」
    「ふーん」

    彼女のことだ。本当は会いたいに決まっている。彼女は卒業後一般の演劇団に入団した。それは彼女の性別の関係だ。なので、先輩方はもちろん、同期ともあまり会えていない。僕は玉坂座で毎日顔を合わせているが彼女はそうではない。少し寂しそうにその写真を見ている彼女を横目に連絡先からある人を見つけメッセージを打った。すぐに返信は来て何言か言葉を交わし画面を消す。

    「希佐、出かけよう」

    唐突にそう言われた彼女は驚いていた。だが、出かける支度をしている僕を見て本気だと分かったのか彼女も支度を始めた。そして二人とも支度が終わり家を出る。

    「どこに行くんですか?」
    「まだ決めてない、でも喫茶店とかかな?」

    なんて言葉を交わしながらマンションの外に出るとちょうど声をかけられた。

    「ミツー、希佐ー」
    「え、フミさん!?それにみんなも」
    「本当にこの辺にいたんですね」
    「あぁ。織巻達に会った後、コクトが美ツ騎も休みだから家まで誘いに行こーって言い出して。最初は止めたんだが聞かなくてな」
    「スズくんもそれにのっちゃってたんですよね」
    「だって、行ったらもしかしたら立花に会えるかもしれねーじゃんって思って」
    「そうだったんですね」

    (ああ、いつもの騒がしさだ。休みの日なのに)

    美ツ騎は内心ため息をついた。だが、その横で嬉しそうに笑う彼女を見ればそんなことどうだってよくなる。

    「というかマンションの前で立ち話はやめません?他の人の迷惑になります」

    そう僕が呆れたように言えば皆、そうだなと言い近くの僕オススメの個室のあるお店に行くことになった。

    個室に入りメニューを注文した後、待ってました!と言わんばかりに皆、最近の近況を希佐に報告し合ったり、先輩たち(主にネジさん)に僕達の同棲生活の話を根掘り葉掘り聞かれたりしてあっという間に時間が過ぎていった。
    もうお店に来て一時間が経過するくらいの頃、そういえば・・・とフミさんが口を開いた。

    「今日ってお前らの真ん中バースデーじゃねえか?」

    (真ん中バースデー?なんだろうそれは?)

    そう思ったのは希佐も同じだったらしく首を傾け聞き返していた。

    「真ん中バースデー?」
    「知らないのか?お互いの誕生日のちょうど真ん中の日を真ん中バースデーって言うんだぜ」

    そうなのか。初めて知った。今日は僕と希佐の誕生日のちょうど真ん中なのか。前までは記念日なんてくだらないと思っていた美ツ騎だが、希佐と生活していくうちにその考えは変わったらしい。ただ、お互いの誕生日のちょうど真ん中なだけ。それだけなのになぜだか今日がすごく特別な日に感じた。

    「そうなんですね、なんか素敵ですね」

    希佐も僕も同じ考えだったらしい。何気ない日常の一日だった今日が急に特別な日に感じた。

    その話でまたネジさんのスイッチが入ってしまった。そしてなぜだか今度はフミさんと織巻も加わりしばらく同棲生活の話を聞かれることになり、やっと開放されたのはお店に入ってから三時間後のことだった。
    フミさんたちとは店の前で別れ、二人でマンションまでの道のりを歩く。

    「みんな、元気そうで安心しました」
    「楽しかったか?」
    「はい、さすがに同棲生活聞かれるのは恥ずかしかったですけど」

    他愛のない話をしながら歩いているとあっという間に家に着いた。時間的に丁度良かったので二人で夕食の用意をして一緒にご飯を食べた。そして交代でお風呂に入った。先に希佐が入り、僕が後。希佐が入っている間に夕食の後片付けを済ませ暖かい紅茶を入れて置いた。程なくして

    「お風呂、上がりましたよ」
    「ああ、分かった」

    濡れた髪を拭きながら希佐が部屋に入ってきた。出たばかりの彼女の頬は赤らんでいた。それにまだ湿っている髪の毛。いつも見ている光景のはずなのに今日が特別な日だからかいつもより色っぽく見えた。

    「・・・美ツ騎さん?お風呂入らないんですか?」
    「え、ああ、ごめん。あまりにお前が綺麗で見とれてた」
    「ええ、冗談ですよね?早くお風呂入らないと冷めちゃいますよ?」

    彼女は僕の言ったことを冗談だと思ったらしい。確かに僕は普段そういうことを言わない。それに今、見ている姿は毎日見ているものなのだ。でも信じてもらえないのはなんだか寂しかった。

    そんなことを考えていた僕は彼女の頬が僕の言葉のせいでさっきより赤くなっていたことに気づかなかった・・・





    お風呂から上がりリビングに続く扉を開けると希佐がソファーに座りながらこちらを振り向いた。

    「あ、美ツ騎さん。おかえりなさい。あの、少しいいですか?渡したいものがあって」

    なんだろうと思い希佐の隣に腰を下ろすと彼女は小さな箱を差し出してきた。

    「あの、これ、ペアネックレスなんです。もし良かったら貰ってくれませんか?本当はずっと前から買っていたんですけど渡すタイミングが掴めなくて。さっき、フミさんに今日が二人の真ん中バースデーだって聞いた時に今しかないかなって思いまして」

    そうはにかみながら笑う彼女。その手の上にある蓋の空けられた箱の中には綺麗な宝石のネックレスが入っていた。

    「綺麗だな」
    「これ、アクアマリンっていうんです。見た瞬間に美ツ騎さんみたいだなって思って。それに・・・」

    彼女は一度言葉を切った。不思議に思い彼女を見ると照れながらもおずおずと口を開いた。

    「アクアマリンってパワーストーンなんですよ。色々あるんですけど店員さんにアクアマリンは幸せな結婚の象徴なんですよって言われて・・・」

    その言葉を聞いた僕の顔も彼女みたいに真っ赤になっているだろう。とても恥ずかしかった。でも彼女がそういう気持ちでこのネックレスを選んでくれたことが何より嬉しかった。

    「嬉しい、希佐も僕との結婚を意識してくれてたんだ。希佐にとっては当たり前のことかもしれないけど今の言葉すごく嬉しかった。・・・ねえ、希佐。お願いがあるんだけど」
    「なんですか?美ツ騎さん」
    「キス、してもいい?」
    「っ!?」

    彼女の息を呑む音が聞こえ、彼女を見れば石像のように固まっていた。だが、しばらくすると本当に僅かだが小さく頷いてれた。それを確認した僕は彼女の唇を優しく啄んだ。何度も離しては啄み、いつしか2人してソファーの上に倒れ込んでいた。何度目かのキスを終え顔を離して彼女の顔を見る。目が合うと彼女は微笑んで僕に抱きついてきた

    「美ツ騎さん、私幸せです」
    「僕も。こんなに幸せでバチが当たらないか心配になるほど幸せだ」
    「ふふ、バチなんか当たりませんよ。お互いに今まで大変な道を歩んできたんですから。今度は二人一緒にとことん幸せになりましょうね、約束ですよ」
    「ああ、約束する。二人だけの秘密の約束だ」

    その言葉を合図に二人はまたそれぞれの顔を近づけてキスをする。それはまるで誓いのキスのようだった。


    そしてその一年後、同じお店で再び仲間と集まり二人で幸せそうに結婚報告をするのはまだもう少し先のお話・・・
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