チキンバード教室の、一番窓側の、一番後ろの席に座っている彼が見えるだろうか。
彼のあだ名は「チキン」。見ての通り制服の襟の部分から、まだ小さな赤いトサカとクチバシのついた頭がニョキっと生えていて、制服のズボンから、鱗とカギヅメのついた四本指の足が見えている。彼はヒトの服を着たニワトリである。
チキンは今日も、みんなとなじめずにいた。授業中も落ち着きなく、羽繕いや手いたずらを繰り返しては先生に叱られる。黒板に字を書くのもヘタクソで、手先がブルブル震えてしまう。いつ誰に笑われているのか心配でキョロキョロ挙動不審に首を振るしぐさがもう滑稽だと馬鹿にされた。
チキンは壁画のような金色の目玉で、どこかをジッと見つめて黙り込んでいるので、みんな初めは何を考えているかわからず怖がった。世界滅亡計画を立てているとか、目からビームを撃とうと精神集中しているとか、いろんな噂が立ったけど、そのうち何も考えていないという結論が主流になった。
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