❏設定❏
・とくになし
❏本文❏
杏「ねえ、みんな、こはねって本当に天使だよね」
こはね「へ!? あ、杏ちゃん、急にどうしたの?」
杏「どうしたもこうしたも、こはねって天使だな~って思って」
彰人「おい、語彙力なくしてんぞ」
冬弥「白石、突然どうしたんだ?」
杏「まったく、もう……あんた達二人がどうしても聞きたいって言うなら、今日だけ特別にこはねの天使エピソードを話してあげなくもないけど?」
彰人・冬弥(そこまでして、聞いてほしいのか……)
杏「それでね、さっき父さんから頼まれたお使いをこはねに手伝ってもらってたらさ~」
彰人「おい、勝手に話しはじめるな」
冬弥「いいじゃないか、聞いてやろう」
彰人「いや、そうは言ってもだな……」
彰人(さっきから、当の本人であるこはねが置いてけぼりの状態なんだが……)
こはね:状況についていけない様子で、オロオロしている
~数時間前~
※杏が強引に話しはじめたため、強制的に回想に入る
こはね「このお店、すごい品揃えだね、杏ちゃん。コーヒーのコーナーもすごかったけど、ケーキやお菓子のコーナーも、材料だけでこんなに沢山あるなんて」
杏「ふふ、すごいでしょ。こはねがよく注文してるトッピングの材料も、ここで買ってるんだよ」
こはね「わ、ほんとだ、私が好きなトッピング、もしかして全部ここに……」
杏:こはねが話し終えるのを待たずに、突然こはねの体を商品棚に押しつける
こはね「……っ!? あ、杏ちゃん……ここ、お店の中、だよ……?」
杏「そうだけど、今は周りに誰もいないし……ね、いいでしょ、こはね……」
こはね「……っ、あ……杏、ちゃん……」
杏「こはね……」
杏・こはね:熱を帯びた眼差しで見つめあい、お互いの名前を呼びながらゆっくりと顔を近付けていき、そっと唇を重ねあわせる
〜現在〜
杏「……って感じで、こはねは今日も天使でしたとさ」
彰人「おい、どこからがお前の作り話だ?」
冬弥「……? 彰人、なぜ作り話だと決めつけ……」
杏「ちょっと彰人、余計なケチはつけないでよね。お店に入った辺りからだけど、なにか文句でも?」
冬弥「……っ!」
冬弥(ほとんど最初から、作り話だったのか……)
彰人「冬弥、杏のこはねに関する話はただの願望でしかねえから、絶対に信じるなよ……」
冬弥「ああ、肝に銘じておくとする……」
杏「まったく、これだから外野は……話を面白くするために多少盛ったのは事実だけど、そんなのトークの基本でしょ」
彰人「話の内容の99%を捏造することを、多少盛るとは言わねえんだよ……つーか、勝手に話しはじめておいて、外野扱いすんな」
冬弥「そうだな、もう少し捏造の割合を抑えたほうがいいだろう」
こはね「ふふ」
杏「あ、こはねが笑ってくれた! きっと、私のトークが冴えてたからだね!」
彰人「お前のその自信は一体どこから来るんだよ」
冬弥「小豆沢、大丈夫か? さっきから、話についてこれていない様子だが……」
こはね「え? だ、大丈夫だよ。ただ、杏ちゃんには悪いなって、ちょっとだけ思ってたんだ……」
こはね以外の三人「……?」
こはね(私がまだ杏ちゃんの気持ちに応えられてないせいで、杏ちゃん自身も分かってないけど……全部が全部、杏ちゃんの作り話ってわけじゃないんだよ? だから――……)
こはね:ほんのりと頬を染めながら、杏を見つめる
こはね(私の中の、勇気が育つまで……)
こはね「もう少しだけ待っててね、杏ちゃん」
杏・冬弥「……?」
冬弥「どういう意味だか分かるか、彰人……」
彰人「……」
彰人(多分、オレの想像通りなんだろうが……これ以上、杏を調子に乗らせたくねえから、黙っておくか……)
~終~