南方がワニになってしまったので、棟耶は自宅のプールを提供することにした。
体長は7メートル。世界最大のワニの記録を超えてしまっては一般的な家の風呂場では狭すぎるだろうと提案してみると、あっさり承諾されたので棟耶はやや拍子抜けした。
毎日新鮮な生肉がある、だとか、屋内なので冬も安心だぞ、だとか色々と誘い文句も用意していたのだが、それを使う暇もなく南方は「助かります」とギザギザに並んだ牙を見せつけいそいそと棟耶宅にやってきた。
早速プールサイドに陣取り「ああ、これは良いですね。広さも申し分ない」と気に入った様子で根元が丸太並に太い尻尾をぶんぶん振っている。犬のようだ。
「水温はどうだ?」
「どれどれ…ちょうどいいようです。流石ですね」
1712