エピローグ広大な宇宙に無数に散らばる星々の一つ、美しい青と緑が広がる小さな星。その星の中にある小さな小さな島に住む1人の女性が不思議な力を持った妖精と出逢いました。妖精の魔法を借りて“プリキュア“に変身した女性は大切の仲間と力を合わせて宇宙に溢れる色を悪い王様から守りました。これは祈りと救い、そしてほんの少しの魔法が紡いだ不思議な物語の未来のお話。
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小さな墓石の前に座る花の刺繍が施された真っ白なワンピースに身を包んだ共ポジの橙色のおさげとその髪を飾る淡い水色のリボンを穏やかな風が揺らす。
「ししょー、ごめんなさい」
大切な友達が教えてくれた仲直りの仕方。もう2度と返ってくる事のない返答を共ポジは静かに眠る世界一尊敬する人の前で待ち続ける。しばらくの間そうして動かなかった共ポジは小さく息を吐くと立ち上がる。その時、一際強く吹いた風にしっかりと結んでいたはずの水色のリボンが解け、空高く吸い込まれていく。
こちらこそごめんね
聞こえるはずのないその声に空を見上げる。共ポジの髪とよく似た明るい太陽、その眩しさに手を翳す。彼女の中に燃える揺るぎない信念。時に人を傷つける凶器となり、時に自身さえも苦しめた怒りの炎は恐れを知らない優しさに包まれ本当の強さを手に入れた。強く優しく人を救う不滅の炎が共ポジの指先を赤く燃やす。
真っ赤なルビー、石言葉は情熱
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「二人とも覚えてる?昔ここでよく隠れん坊したよね」
「覚えてるフガ!ポコがあのたかーい木に隠れて降りれなくなっちゃったこと!」
「何でそんなこと覚えてるポコーーー!!!」
「フガはポコと違ってきおくりょくがいいフガからね!」
恥ずかしさからピンクの体をより濃い桜色に染めたポコがポコポコとフガの背中を叩く。その愛らしい様子にセレナーデは幸せそうに目を細め二人に指輪が光る手を伸ばす。
自分の弱さと向き合ったセレナーデには『勇敢』の意味を持つアクアマリン。残酷な運命に抗い、大切な人達のために過去を受け入れる覚悟をしたフガには『誠実』の象徴、ブルーサファイア。暗く翳る二つの海に希望をもたらしたポコには『光の花』パパラチアサファイア。水色、青、ピンク、小さな宝石が固く結ばれる。
「じゃあ行こっか」
三人が手を繋ぎ故郷の美しい海辺を歩く。まるで溢した記憶を拾い集めるように。ゆっくりゆっくりと。
〜〜〜
「へえ〜宝石にも一個一個意味があるんだね」
トントントン、と耳に心地良い音が二人きりの部屋に響く。分厚い図鑑のような本を読んでいたわかめだはページをめくる手を止め、台所に立つ愛おしい人に声をかける。
「ねえ、ゆーちゃん」
「なあに?」
「ずっと聞きたかったんだけどさ何で私達の指輪だけリングが銀色だったの?」
「え?」
「もしかしてけっこ、もがっ!」
話しかけていたわかめだの口にユーロが赤く熟れたトマトを突っ込む。プイッと背けられたユーロの頬がトマトと同じくらい赤く染まる。
「知らない!」
「えっ!ちょっ!ゆーちゃん!何それ!」
笑顔で並ぶわかめだと夕。その写真たての前に飾られた銀色のリングの二つの指輪。開け放たれた窓から吹く風がチリンと爽やかな音を鳴らし、置かれた本のページをぱらりとめくる。見開き2ページに紹介されている二つの宝石。
【ペリドット 石言葉:夫婦の愛】
【タンザナイト 石言葉:希望】
〜〜
ゴロゴロと大きな荷物を引っ張るなしなが赤くなった頬を抑えながら一人歩く。
「なにも本気で叩かなくてもいいじゃん」
イテテ、顰めっ面で文句を言うその顔は付き物が落ちたようにどこかスッキリとして見える。
「やっぱ最後まで信じてくれなかったな〜、さすがお母さん」
別れを告げても母は最後まで変わらなかった。
「でもワタシは変わるよ」
「な〜ぎ〜さ〜ちゃ〜ん〜!!!」
小さななしなの呟きをかき消すような大きな声が静かな住宅街に響き渡る。わかめだ、共ポジ、セレナーデ、ユーロ、ポコ、フガ。顔を上げた先に待っているのは大切で大好きな友達。
「みんな〜!ただいま!」
大きく手を振るなしなの指を彩る鮮やかな黄色。希望、知性、友情の象徴。チャンスを引き寄せ、未来への希望をもたらすトパーズ。黄色い宝石が夕陽を反射して光り輝く。
「おかえり!」
未来も過去も今も。全てワタシの一部。だから全部背負って生きていく。なにも怖くない。だってワタシには一緒に荷物を持ってくれる仲間がいるから。前だけを見て走り出す。
まだワタシ達の物語は始まったばかり
始まりがあれば終わりもある。
その結末も彼女達にとっては始まりである。
追記2022/5/4