乖離する月と、微睡み「さにー!!!!」
仕事が終わり、玄関の扉をもうすっかり慣れた手付きで開けると、きっと今か今かと俺の帰りを待ちわびていた世界で一番愛しい恋人が飛び付いてきた。
「おかえり」
上目遣いのきゅるんとした瞳にそう言われれば、すばしっこい犯人を街中走り回って捕まえた疲労すら容易に吹き飛んでしまう。
「ただいま!」
我慢ができなくて抱き着き返し、目の前の白くて丸い頬に数回ほどキスを落とせば、彼は耳を赤くした。
もう出会って3年も経っているのに、いつまでも初心なこの人はこの上なく愛らしい。
「さにぃ」
甘えた声が、俺の胸に閉じこもって響いた。
頭をぐりぐり押し付けられる。猫みたいでかわいい。
「なぁに、あぅばーん?」
頭を撫でてやると、僅かに潤んだ視線がこちらに寄越された。
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