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    Ugaki_shuuu

    @Ugaki_kakkokari

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    Ugaki_shuuu

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    久我くんと小峠さん。久我くんの他人との距離の取り方のうまさと年相応っぽさと小悪魔っぽさを表現したくて撃沈した。

    #くが+かぶ
    kuga+cap

    小峠さんと久我くんがご飯を食べに行く話①「……あ。」

    町中でバッタリあの人に出くわして、思わずそう、声を漏らしてしまった。俺は久我虎徹。黒焉街をシマとする京極組に所属する人情派の極道だ。

    出くわしてしまったことへの気まずさは、相手もおおむね同じだったのだろう。あちら様も少しだけ目を見開いて、口を「あ」の形にちいさく開いていた。それからその薄い唇を、横一文字に引き締める。何を言うでもなかったが、猫のように毛を逆立てて、こちらを伺っているのが、なんとなく伝わってきた。

    「……どうも」
    「……ああ」

    先の戦争では、京極組が敗北を喫するという結果でケリがついた。そうなったからには、やはりこちらから挨拶を入れるのが筋というものだろう。なにせこちらのほうが年下なのだし。相手の様子を見つつ低い声でこちらから告げると、相手も警戒した態度を崩さぬまま、軽く瞼を伏せて会釈した。黒い扇のような睫毛が、その象牙のような白い頬に一瞬だけ影を落とすだけが、妙に美しかった。

    「今日は黒焉街には、どういった御用で?」

    争いの終結後、締結された終戦条約の中に「天羽組が黒焉街に用がある場合は、出入りをしてもいい」という条項があった。これがあるからにはこちらから相手がここにいることに対して何を言う権利もないのだが、やはりかつては敵対していた相手のこと。どうしても気になってしまう。
    そうしたこちらの問いかけに相手も若干鼻白むような表情を浮かべはしたものの、そこは同じく自分のシマを守る極道者、こちらの気持ちを汲む部分もあるのか、あえて組同士の取り決めを持ち出しつっかかってくるような真似はしなかった。淡々と「べつに。ちょっと昼飯を食いに寄っただけだ」しれっとそう返してきたので、こちらも「へーぇ、昼飯ねぇ…」相手の言葉尻を引用して相槌を打った。それを言いながら、その腹にちらりと視線を走らせる。かつて俺が自分の獲物を突き刺したことがある、青いシャツと晒しに包まれた、血肉の通う腹。

    「…そういえば、ハラの傷はもういいんですか」

    まるで他人事のようにそう問えば、相手が明らかに気色ばむのが分かった。先に昼飯を食いにきただけ(つまりこちらに害をなすために来たわけではない)と言っていただけあって、さすがに縦横無尽に怒気を放つようなことはしていない。が、その体から、押し殺したような殺気が放たれるのが、ひしひしと感じられた。まるで、地底でドロドロになるまで熱せられたマグマが、ボコボコと音を立てて今にも噴火しそうなのをぐっと抑え込むような。

    (しまった、やりすぎた)

    さすがにちょっとやりすぎたと思い、俺は慌てて、話題を逸らすことにする。

    「俺、あのとき小峠パイセンにきついの一発貰ったおかげで、しばらく病院食しか食えなかったんですよね」

    あん時の恨みは忘れませんから。ここはひとつ、その借りを返すと思って、俺もメシに連れてってくださいよ、と。不敵に笑いながら言うと、「そりゃこっちのセリフだ」と。こちとら危うく死にかけたんだ、容赦なくブッ刺しやがって。ニコリともしない相手が、絶対零度のような冷たい表情を浮かべて言い返してくる。白い額にひっさげた能面のような表情が、なんともおっかない。ニコニコ微笑んでりゃ多分白皙の美丈夫なのにな。
    取り付く島もないその様子に、さすがにタジタジとなって、俺は苦笑してもろ手を挙げた。

    「わかりました。今回は俺がおごります。」

    だからそれで、俺とあなたの間も手打ちってことにしてもらえませんか、ね。降参の意を表して自分がそう告げると、いくら腹が立ったとしてもここで白昼堂々やり合うのは得策ではないと考えていたのだろう。「チッ」と舌打ち一つして、相手も矛を収めるようだった。

    「誰がお前に奢られるか。お前が俺に奢られて、貸し作っとけ」

    しかも言葉の荒々しさとは裏腹に、昼食に同行させてくれ、あまつさえ奢ってくれるらしい。多分、ここで退いたら尻尾を巻いて逃げ出したようで嫌なのだろうな、と、相手の心中を慮る。が、もちろんそんな失礼な態度はおくびにも出さない。極力明るい雰囲気で、

    「え、いいんですか、ラッキー!」

    いかにも楽し気な風を装って、俺は声を上げた。
    そんな俺に対して相手はげんなりした表情を浮かべている。「こんなところで油売ってる暇があるなら、とっとと稼いでうちの組に三億円払い終えろよ」などと、しっかり嫌味を付け加えるのも忘れない。そうは言いながらも、その人の爪先が俺のつま先と同じ方向を向いているのがなんとも愉快だった。俺は思わず、本当に声をあげて笑ってしまった。

    「焼肉かしゃぶしゃぶ、どっちかでお願いします」
    「ふっざっけんな。俺は和定食が食いてーんだよ。とっとと案内しろオラ」

    この人とはなんだかんだ、仲がよくなれそうな気がする。
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