きずあとひとつ掌から指先で、唇から舌先で、こいつの身体で触れていない場所などもうどこにもない程触れ合って、溶け合って、気付いたことがひとつ。
何をしたってデスリセット。銀製の火傷どころか噛み跡もキスマークすら終ぞ残らない柔肌に、唯一。何度死を迎えようとも消えない傷跡がある。
絡めとるように赤く彩られた指先を捕らえて、常人なら数日で消え去りそうなささやかなその跡をなぞる。気になるかい、といたずらに目を細めるが、それだけだ。こいつからは何も言ってくれやしない。
俺もつけたい。望まれたい。そこにあるのは、もう二度と手放すことはないと、永遠を誓った最愛とのしるしだ。
その誓いを貫く為に、この驚くほど脆い身体が崩れるのを自ら耐えて、そうして初めて見せる血の色は、その味は、どんなに甘美な事だろう。
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