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    fuki_yagen

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    初出:2022.08.03

    ひらぶー用に書いた短いΔ/逆転ロナドラです。
    なんとなくいちゃいちゃしている。

    #Δロナドラ
    #ロナドラ
    Rona x Dra

    カナリアのニブルス ペティナイフで野菜の皮を剥きこまかに切っていく様を、先程から酒を片手にカウンターを横から覗いている男がじっと見ている。ちらと横目に視線を向ければぱちりと目が合い、金の眼がンフフ、と笑った。
    「何見てんだよ、ドラルク」
    「んー、君が料理してるとこ見るの、結構好きなんだよな」
    「普段は見に来ねえだろうが」
    「ジョンとそっちで遊んでろって追い出すだろうが」
     そりゃまあせっかくのくつろぎタイム、使い魔との時間を邪魔をしているというのにこっちにいろとは言えないだろう、とふ、と小さく溜息を吐いて、ロナルドは細く切ったパプリカを避けた。吸対隊長はく、と手にしていたグラスを傾ける。ぺろりと赤い舌が唇を舐め、こいつ酔わないっつってたのに今日はなんだか酔ってるな、とロナルドは内心で思う。
    「君のそのおっきくて強い手が野菜潰さないように繊細に扱うの、なかなか色っぽくていい」
    「い、色っぽい?」
    「酒が進むねえ」
    「俺酒の肴にされてるの?」
    「んふ、そうだよ」
     に、と笑った顔は衒いがなくてどこか無邪気だ。人間、ダンピールとしてそこそこの年齢だというこの男にしては珍しい顔ではある。
     ベッドの中だと素直なんだけどな、と考えながらぱりぱりとゆで卵の殻を剥いて、ロナルドはふと唇で嗤った。
    「強く触ったら潰しちゃうからな、お前のことも繊細に触ってるつもりだけど?」
    「すけべ」
    「今すけべなのはお前なんだよなぁ」
     うふふ、と機嫌良く笑い、ドラルクはグラスを片手にしたままロナルドへと顔を寄せた。
    「ロナルド君」
    「ん」
     両手が汚れたままでは頬に触れることも躊躇われ、目を伏せ少し傾けられた顔に唇だけを触れてキスをする。それからロナルドはむ、と眉を顰めた。
    「おい、ドラルク」
    「ん……?」
    「お前この酒、吸血鬼用だろ。血は入ってねえけど血液錠剤みたいなにおいがするぞ」
    「えー……? ああ、そうなのかな? お父様のところから適当にもらってきたからちゃんと見てなかったな」
    「……お前ダンピールのくせに吸血鬼用の酒でなら酔うの」
    「わたしきみの血でよっぱらうじゃない」
    「あれは酔ってんのか?」
     まあいいでしょ、今日はジョンも留守だし、とプンとしてグラスを傾け一気に空にしたドラルクに、ああなるほどさみしいのか、と溜息を吐いて、ロナルドはゆで卵をスライスした。
    「ジョンと張り合うつもりはねえけど、俺がいるのにつまんながって酒飲んでんじゃねえよ」
    「ハァ? 誰がつまらんと言ったんだね」
     ぐい、と尖った耳を掴まれ引っ張られるまま顔を近付けてやると、頬骨のあたりに唇が触れた。耳元で耳良い声が囁く。
    「ちょっと血流いいほうが盛り上がるかなって思っただけだよ」
    「…………」
     ぱ、と手を離し、酒の瓶と空のグラスを持ってドラルクはソファへと向かう。サンドイッチができるのも待たずに映画でも観るらしい。
    「……あのさドラルク」
    「んー?」
    「お前もしかして俺のこと結構好きなの」
    「ア? 何言ってんだバカなのか。いくら私でも好きでもない男に股は開かんわ。もともとヘテロなんだぞ私は」
    「…………そ、そう」
     知らんかった、と赤面し、ロナルドは映画のオープニングに間に合わせるべく慌てて調理を再開した。
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    fuki_yagen

    PROGRESS7/30の新刊の冒頭です。前に準備号として出した部分だけなのでイベント前にはまた別にサンプルが出せたらいいなと思うけどわかんない…時間があるかによる…。
    取り敢えず応援してくれるとうれしいです。
    つるみか準備号だった部分 とんとんと床暖房の張り巡らされた温かな階段を素足で踏んで降りてくると、のんびりとした鼻歌が聞こえた。いい匂いが漂う、というほどではないが、玉ねぎやスパイスの香りがする。
     鶴丸は階段を降りきり、リビングと一続きになった対面式キッチンをひょいを覗いた。ボウルの中に手を入れて、恋刀が何かを捏ねている。
    「何作ってるんだい? 肉種?」
    「ハンバーグだぞ。大侵寇のあとしばらく出陣も止められて暇だっただろう。あのとき燭台切にな、教えてもらった」
    「きみ、和食ならいくつかレパートリーがあるだろう。わざわざ洋食を? そんなに好んでいたか?」
    「美味いものならなんでも好きだ。それにな、」
     三日月は調理用の使い捨て手袋をぴちりと嵌めた手をテレビドラマで見た執刀医のように示してなんだか得意げな顔をした。さらさらと落ちてくる長い横髪は、乱にもらったという可愛らしい髪留めで止めてある。淡い水色のリボンの形をした、きっと乱とお揃いなのだろうな、と察せられる代物だ。
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