奇跡が重なれば運命に変わるみたいに眼前に広がるのは色鮮やかな青い薔薇、薔薇、薔薇。吸血鬼の性質故に全てに視線を走らせるとその数なんと999本。
階段の踊り場を埋め尽くす青い薔薇。その中心に差し込む月光を湛え佇む深紅。
目の当たりにした光景は美しいという言葉を超えて神秘的だと言えるだろう。
「お嬢、さん…?これはいったい…」
私は深紅、もといお嬢さんに問いかける。すると彼はにこりと満足気な笑顔を浮かべながら口を開いた。
「これは私の『想い』ですわ」
「想い?」
「ええ、想い」
一歩、また一歩とこちらに近づいててくるお嬢さんはなんてことのないように無数の薔薇を優雅に避けなが続ける。
「わたくし、最近思いますの。おじ様はどこか焦っているのではないか、と」
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