やさしいキスをして。(五悠?)「ゴメン。釘崎、伏黒。俺、用事思い出したわ。先に帰えんね!!」
今日は3人揃って夕飯を食べようと街へ繰りだしていた時だった。スマホの新着通知を確認した悠仁が、それだけ言い残すと慌てたように駆け出す。
「え、虎杖?!急にどうしたのよ、アイツ…。でも、用事ってなんなのかしら?」
詳しい事を聞こうと野薔薇が声をかけたが、悠仁は遥か彼方へ走り去っている。
「…さぁ?あ、コンビニ寄りたい」
「解った」
無言で悠仁を見送った恵は、野薔薇とコンビニへ立ち寄るのだった。
ーー
通知と共に表示されたメッセージには、ただ一言
『会いたい』
だけで。いつもの軽いノリは影を潜んでいる。
普段とは違う様子に、悠仁の不安が募る。
(先生…)
流石に呼吸も苦しくなってきて、スマホを仕舞うのももどかしく握りしめた掌は、手袋をスマホを操作する際に外してしまった為に、指先が凍るように冷えてきたが、構わずに悠仁は走り続けた。
ーー
「先生…」
コチラに気付いてるのに、ソファに腰かけたまま振り向こうとしない頭にそっと腕を伸ばす。
「よく解ったね、僕がココにいるって」
頭を抱きしめられた五条が、ようやく悠仁へと向き合ってヘラッと笑った。ココは、以前一緒の時を過ごした地下室だ。
「うん、何となくね」
五条の顔を覗きこむように悠仁は見た後、一度腕を離して五条の隣へ腰かけた。
「急に変なメッセージ送ってゴメンね。出張続きだったから流石に疲れてさ~。悠仁の顔、見たくなっちゃって☆でも、もう大丈夫。悠仁も予定何かあったんじゃない?ソッチへ行ってm」
「大丈夫よ。予定、なんもなかったから。先生、最近寝てないっしょ。隈、酷いよ」
普段通りに振るまおうとする五条の目隠しを下へズリさげる。綺麗な青い宝石のような瞳の下には、クッキリと隈が刻まれて居た。
「何で…悠仁は気付くかなぁ。そうだよ、最近疲れてるのにあんまり寝れなくて。少し、シンドイ」
白状するように、五条はズルッ…と悠仁の方へもたれかかり、肩へと頭を乗せる。悠仁は五条の上体を支えると、ユックリと自分の膝へと導くと頭を優しく撫でた。
「膝枕してあげるから、このまま少し寝なよ。固いかもしれんけど」
「アリガト。固くても大丈夫よ……。じゃあ、少しだけ…」
そうしないうちに、五条が小さな寝息を立て始める。それを確認すると悠仁は頭を撫でるのを止めて、ソファの肘置きの所に置いてあるブランケットを、五条へとかけてやった。
その寝顔は、余りにも無防備に安らかで、
五条の額に、悠仁は軽く口付けた。
報われなくても結ばれなくても
あなたは
たった一人の、俺を殺してくれる人ーーー。