かっこいい文体/かわいい文体かっこいいの
星の降るような夜だった。
自分の部屋の窓伝いに屋根に飛び降りたとき、アントンは星空に目を奪われてつい大きな音を立ててしまったので、急いで庭の裏口から抜け出した。
アントンはお母さんやお父さんとひどい大げんかをしたので、何もかもがすっかり嫌になって、とうとう家出をすることにしたのだ。アンヴァルを取り囲む城壁のはずれには、アントンと何人かの友達だけが知っている秘密の抜け道がある。そこを通りぬければ、子供だって衛兵に止められることなく城の外に出られる。こっそり家から持ち出した袋には、パンやなけなしのお小遣いや、小さなナイフさえ入っていた。アントンもずっと町の外で生活する気なんてなかったけれど、これだけあれば一日二日は外で寝たって大丈夫だろうと思った。
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