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    みらい

    @rairai_aki

    K暁メイン
    基本パピED 皆生存ifの世界線で書いてます。
    無断転載は絶対に許さないマンなので、見つけ次第訴えます!

    ※R18はリス限となっております。
    18以上の方のみリスインさせていただきます。

    誤字脱字は許してください。
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    閲覧、いいね、いつもありがとうございます。
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    みらい

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    過ぎてしまいましたが、七夕のお話
    ED後、誰も帰ってこなかった、独りぼっちの暁人のお話。
    CPは無いです。

    #GWT
    #GhostWireTokyo

    短冊に願いを…「良かったら、どうぞ」
     バイト帰りに商店街を歩いていると、声をかけられ、何かを手渡された。青紫色の短冊に、「ああ、もう七夕なのか」と驚いた。月日が流れるのは以外に早い。あの夜から、いつの間にか○ヶ月が過ぎていたのか。手渡された短冊をボディバッグの中にしまうと、商店街を後にした。

    『短冊に願いを…』

     時刻は夜の八時。屋台が並び賑わう道路から離れ、裏道を通っていく。七夕前日の曇のち雨という天気予報が嘘のように晴れた。夜空に輝く星々に織姫と彦星は出会ったかなと、ロマンチックなことを考えてしまう。
    「柄じゃないな」
     大学の友人たちに誘われた七夕祭りには、気を使われている気がして、どうしても行く気になれず、断りを入れた。バイトの予定も入っていた為、長くは一緒に遊べないのはわかっていたし、一人になりたかったのもあるのだ。
    「楽しかったね!」
    「ほら、前見て歩きなさい」
     楽しそうな親子が歩いてくる。木曜日にも関わらず、家族連れが多い。
    「懐かしいな、小さい頃はよく来たな…」
     まだ家族が元気だった頃の事を思い出す。麻里がよくりんご飴を強請って、父さんが買ったけど、結局全部食べ切れなくて母さんが「今度はいちご飴にしなさい」って、いつも怒られてたっけ。懐かしい思い出に浸りながら、せっかくの星空をより近くで見たくなった暁人は、整備された山道を歩いていく。長い石階段を登る。ここの神社は社より下に手水舎があり、そこから町が一望できる。
    「うん、いい眺め」
     ビルだらけの場所とは違い、ここは星空が良く見える。同じ考えの人が他には居らず、暁人だけの特等席となっていた。静かに空を眺める。
    「お兄さん」
    「――っ⁉」
     突如、背後から声を掛けられ、肩が跳ね上がる。後ろに振り返ると、優しそうな顔をした神主が居た。
    「宜しければなのですが…」
    「あ、ありがとうございます」
     手渡されたのは、またしても短冊であった。
    「社の方に吊り下げる場所がありますので、良かったら」
     神主はそう告げると、社の方へと戻っていった。
    「…願い事は書いたんだよな」
     七夕前に貰った短冊に願い事を書き、今日ここに来る途中の商店街に吊るして来たばかりなのだ。既に一枚書いてしまった暁人は願い事を考える。
    「うーん、願い事…願いか…」
     ボディバックからペンを取り出し、短冊に文字を書いていく。
    「うん。これかな?」
     社へと続く石階段を登り、大きな竹が飾られているところへと足を運んだ。
    「書き終わりましたか?」
    「ええ」
     短冊を手短な場所へ結びつける。ひらひらと舞う短冊に、不意に笑みが零れた。
    「宜しければこれも」
     短冊を書いた皆様全員に渡しているんですよと、一本の線香花火を貰った。下の手水舎の所がちょうどいいですよ、と教えられる。暁人へと手渡すともう用がないとばかりに、神主はそそくさと社の中へと戻っていってしまった。
    「線香花火か…」
     神主の言葉通り、手水舎の傍まで歩くと、使いもしないライターをボディバックから取り出す。火が付きやすいようにその場でしゃがみ込み、線香花火に火をつけた。
    「ふふ、線香花火得意なんだよね」
     得意げに笑い、線香花火を見つめる。シュワシュワと音をたて、火花が散っていく。何年ぶりだろうか、思い出にふける。
    「そうなんだよね、お兄ちゃんていつも最後まで残るんだもん」
    「線香花火に得意、不得意ってあるのかって話だけどね…」
    「でも、本当に得意だよね」
     帰ってくる言葉に隣へと視線を移す。そこには、セーラー服を着た麻里が暁人の傍で、一緒にしゃがんでいた。
    「麻里…」
    「お兄ちゃん、ご飯ちゃんと食べてる?」
    「…うん、食べてるよ。昨日もラーメンにチャーハン大盛り、餃子も頼んだよ」
     鼻の奥がジーンと痺れる感じがする。目の縁に涙が溜まり、鼻を鳴らす。
    「お前、前から思ってたが、それは流石に食いすぎだろう」
    「そ、そんなことないよ!育ち盛りだ、し…KK?」
    「おう、案外元気そうだな」
     足を大きく広げて、踵をつけてしゃがんだKKが隣にいた。初めて会った時の恰好のままのKKが其処にいる。
    「それにしても、長くないか?」
    「だから、お兄ちゃん得意なんですよ!」
    「線香花火に得意ってあるのかよ」
     暁人を挟むように陣取るKKと麻里が、線香花火を見つめながら、終わりがいつ来るか、話合っている。ああ、そうか。
    「これが落ちたら、終わりなんだね…」
    「永遠なんて無い。わかってるだろう…」
    「わかってる…」
    「お兄ちゃん…」
    「大丈夫、生きてくよ、最後まで、約束したから…」
     ぽとっ…光が消える。色とりどりの火花が散っていく。終わってしまった…まだ、話していたいのに…
    「……」
    「お兄ちゃん、頑張りすぎないでね」
    「無理はするなよ、相棒」
    「うん」
     肩と背中を叩かれる。二人の声にゆっくり頷く。
    「ありがとう」
     瞳の奥から涙が溢れる。二人に諭され、気づく。生き抜くと、約束した通り、頑張って生きよう、普段通りにと頑張りすぎていた。みっともなくても、と言ったのに、弱音を吐いたっていいんだ。頬を伝う涙を拭い、去っていく二人を背に振り返らず、立ち上がる。燃え尽きた線香花火だったものをゴミ箱へ入れ、鳥居が並ぶ石階段をゆっくりと降りていく。まっすぐ、前へと歩いていく。
    『大切な人にもう一度会いたい』
     黄色の短冊がひらひらと風に揺れた。

    おわり
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