大きな肉の塊だった。きれいな格子状の焼き目が付いたそれは香ばしい香りを漂わせていて、濃厚なデミグラスソースがその上でてらりと光っている。ナイフが差し込まれたそれからじゅわ、と透明な肉汁が溢れてソースと絡まって、持ち上げられたそれからもこぼれ落ちて。そしてついには、開かれた真っ赤な口の中へと放り込まれるのだ。
口を一切汚すことなく見えなくなったそれは、大きな口の中でゆっくりと咀嚼される。もぐ、もぐ、一切急ぐことのないそれによってゆっくりとあの塊は小さくされて、そしてごくん、とついに飲み込まれた。空っぽになった口の中へ切り分けられたそれがまた放り込まれる。そしてまた、咀嚼。
「……見過ぎだ」
「え……あ、ごめん」
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