ワンドロお題「誕生日」長く徒歩旅をしていると、日にちの感覚が怪しくなる。街に入って日付を確認して今日はこの日だったかということは、よくある。
だから宿のカレンダーを見てラーハルトがおっという反応をするのも、そこまで不思議はない。
「俺の誕生日だったか」
「は?」
目を丸くしたヒュンケルにラーハルトもビックリしたようで、無意識に出た独り言だったようだ。
「それは祝わないといけないのでは?」
「…お前にその習慣があったのか?」
「父さんが俺を拾った日が誕生日ということになっている。皆が色んなプレゼントをくれて歌ってくれて嬉しかったものだ」
蕩けるような笑顔でそう語ったヒュンケルだったが、ふっとその表情が曇る。
「まあ…よく考えたらそれは略奪品だったんだが…」
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